アトラクションデイズ

  なんでとか、そんなの関係無い。ただ君が、笑うだけだから。
« 12345678910111213141516171819202122232425262728293031»

--.--.--  <<--:--


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

No. スポンサーサイト / スポンサー広告 // PageTop▲

2011.05.01  <<20:23



「・・っ」

町を抜けた林に逃げ込んだラベは、
とりあえずジュカをお姫様抱っこのようにして抱え込んで座り込んでいた。
咳き込むジュカは、口の端から血を零す。

「・・今なら」

殺せる。ラベは腕の中のジュカを見下ろして息を呑んだ。
ジュカは原因不明だが何かで苦しんでいる。

「は・・ッ・・、は・・っ」

白い髪の隙間から覗く額にうっすら汗が浮かんでいた。
ラベは小さく苦笑してその汗を拭おうと、長い前髪をそっと退かした。
そして自分の裾で拭う。

「うわ・・・・」

拭いながらも改めてジュカの顔をまじまじと見、小さく声を零した。
睫毛は長く、人形のような顔をしていた。

「は・・っ、・・ん・・」

瞼が動いて、ジュカはぼんやりと目を開いた。
ラベはそれを覗き込む。

「ジュカさん・・?大丈夫ですか・・?」

静かな口調でラベは聞くと、
ジュカは舌打ちをして身体を起こした。

「・・ッ何してんだてめぇは」

眉間にシワを寄せ、ジュカはふらふらと立ち上がる。
何処だここ、と呟くジュカの腕をラベは掴んだ。
しかしすぐに振り払われてしまった。

「・・殺せば良かったのに」

小さく苦笑してジュカは呟いた。
全くだ、と思うのにラベは立ち上がって迷った。

「・・ッ」

ジュカは激しく咳込み、口の端から赤い液体が零れた。
目を見開きながらもラベは倒れそうなジュカを支えた。

「ッ・・ダメだ、・・な・・」

ジュカは苦笑と共に零し、ラベの服を掴んだ。

「なぁ・・殺せよ・・」

ジ、と赤い瞳を向けてはジュカはそう言った。
ラベは、え、と目を見開く。

「・・何言ってるんですか」

どうしてそんな言葉が出たのか、自分でも解らなかった。
ただ、血を吐いている敵を伐ったって、なんて言い訳がましく思ってしまっているのだ。
いや、そうじゃない。
違う、この人を殺したいんじゃない。

「は・・ッ・・?てめ、こそ・・な、に・・っ」

ジュカは死んだような虚ろな瞳を滲ませてラベを睨んだ。
凄まじい形相だったがラベはジュカをまた抱え上げてしまった。

「俺が殺したいのは・・・あなたじゃない」

ラベの言葉にジュカはまた舌打ちをして、ラベを殴ったのだった。
もちろん一発KOであった。
←and more
No.28 コハクマガイ 2 / 携帯 / Comment*1 // PageTop▲

2011.03.27  <<17:02



はいー明けてましたねおめでとうございます・・!笑

携帯小説DeBLは割と書いているのですが、あげられそうなものがなかなかなくって・・orz

完結しない・・っていうのも一つの理由なのですがね;

という事で、ようやく終わりそうなのがあったのであげてみます。


++++++++++++++++++++++++++++++++


コハクマガイ


世界が混濁と汚れていた。乱世を弱々と生き抜く生き物達。
溜息を零し、黒い空を見上げる。
それでも僅かな幸せを、必死で握り締めて、やがては潰して。
俺もそんな中の一人だった。
――彼に会うまでは。


彼女は、花のように笑う。いつも俺の名前を呼んで。

「あ・・」

不平不満など一切言わずに、いつでも笑う。
だから俺もそれに甘えていたのかも知れない。
彼女が、寂しい、だの、会いたい、だの言わないから。
遠くに離れていたって大丈夫だと思っていた。
でも自分は会いたくて。寂しくて。
だから、早足で帰ってきた。
早く彼女に会いたくて。
ただいま、と声をあげてドアを開けた。
そこは、暖かくて、そんなハズだった。

「ディアレ・・・?」

声が震えていた。
目を見開いているはずなのに、何も繊細には映さなかった。
赤、赤、赤・・その中に倒れる彼女・・・だったモノ。

「ディアレ・・!ディアレっ!」

慌てて駆け寄った。
だけど床に倒れた彼女は動かなかった。
顔をあげる。あったのは、冷たい赤い目。

「・・お前・・ッ」

こいつが、ディアレを。
悲しさと、憤りに後押しされる。
相手が何者だとか、どうしてだとかも考えられずに
無我夢中で立ち上がって、手を振り上げた。
しかし、相手は溜息のように息を吐くのだった。


彼女はいつも、笑う。
日だまりの中で、笑う。

でも今は、血溜まりの中に浮かんで。


「う・・っ」

宙を一回転した。
ラベは強打した頭を抑えながら床をのたうち回った。
顔をあげると傍らに立つ冷たい赤い目に睨まれる。

「弱ぇ癖に意気がってんじゃねぇよ。今殺されたっておかしく無かった。」

溜息混じりに傍らの男に呟かれた。
ラベは霞む視界でその男の虚ろな瞳を見上げた。

「どうして・・ディアレを・・ッ」

涙が溢れて止まらなかった。怖くて、悲しくて、痛くて。
男は頬の返り血を拭った。

「頼まれたから殺っただけだ・・」

頭に血が昇るのを感じて荒い息をはきながら、
ラベは気力だけで立ち上がった。

「辞めとけ・・死ぬぞ?」

そんな事は解っていた。勝てない事くらい。
だけどラベは相手に手を伸ばすしか無かった。

「うわああああ!!!」

しかし手が相手の顔にたどり着く前に、
ラベは男に足を蹴られその場に倒れた。

「・・うざってぇんだよ」

男は眉間にシワを寄せ、吐き捨てるように言った。
男の真っ白な髪が揺れた。

「恨みたきゃ世界を恨め、あんな何の変哲もなさそうな女も、
殺しを頼まれるような事してんだよ・・」

男は一息に喋ると、ラベの横を抜けてドアを開けた。
ラベは慌てて起き上がる。

「ま・・待て・・ッ!」

男はもちろんラベを無視して、ドアを乱暴に閉めたのだった。


ジュカは細長い煙草を口に、歩いていた。
白い髪は前髪が長く、キレるような赤い瞳のほとんどが隠れていた。
人通りの少ない町の路地裏にコツコツとブーツの音が響き、
それを聞き付けた柄の悪いシャツを着た男が近寄って肩を叩く。

「お断りだ」

溜息と共に手を払いのけて、冷たく呟いた。
そして早足で歩き始める。暫く足音はついて来たが、やがてそれも無くなった。
いや、一つになった。

「・・いい加減諦めたらどうだ」

ジュカは立ち止まり、振り返った。
よたよたと血と泥で汚れたラベがついて来ている。

「嫌だ・・っ」

ラベは半泣きで歩き続け、
ようやく立ち止まっているジュカに辿り着いた。

「・・そんなに俺を殺してぇのか」

苦笑するようにジュカは目を細めたが、目は笑っていない。
ラベは肩で息をしながらジュカを睨む。

「ま・・当たり前か・・。」

ジュカは諦めたように呟き、また歩き始めた。
ラベはまたその後をついていく。
相手を殺したい、そうかもしれない。
だけどラベはもっと強く思う事があったのだ。

「ま・・ってくれ・・ッ!」

ラベは叫んだが、ジュカは立ち止まらない。
力を振り絞って前を行く男に駆け寄り、腕を掴んだ。

「は・・ッ待ってくれ・・っ」

乱れる呼吸の中、必死に言葉を紡いだ。
ジュカは掴まれた腕を振り払い、ラベを睨んだ。
その冷たい赤い瞳は、刺すように怖かったがラベは息を飲んで必死に堪えた。

「ディアレを・・。依頼した奴を教えてくれ・・」

ようやく本題を切り出した。
ジュカは、はッ、と鼻で笑いまた歩きはじめる。

「・・断る。教えたら消されんのは俺だからな。それに今のてめぇじゃ誰も殺せやしねぇ」

ジュカに慌ててついて行きながらラベは、う、と唸った。
最もだ。だけどこのままではいたたまれない。
このままこの蟠りを抱えて、一人で生きていきたくはない。

「じゃあ・・俺を鍛えてくれ・・っ!
馬鹿な考えかもしれないけど・・敵をとらなきゃ・・」

ラベの言葉にジュカは、ああバカだな、と切った。
うぐ、とまた唸るが諦めずについていく。

「なんでそんな面倒な事。
てめぇだってそうじゃねぇのか。俺だって敵だ」

そうだけど。恨むなら世界を、という相手の言葉が頭に響いている。
彼女が、一体何をしたのだろう。
何をしたっていうんだろう。

「頼む・・ッ」

ラベは立ち止まって頭を下げた。
そんな甘えた世界ではないと解っているけど。
他に何も・・。
ジュカはやはり立ち止まらなかった。
でもその後ろ姿を逃すまいと、
ラベは涙目の瞳を真っ直ぐにジュカの背中へと向け、また歩き出した。


「・・っ・・」

煙草をくわえる口の端から赤い血が零れそうになってジュカは裾で拭った。
眉間にシワを寄せて、地面を睨む。
喉の奥が痛いような気がしたが、すぐ銃を握りしめた。

「ジュカさん・・大丈夫ですか・・?」

壁に背を預けていると、隣から声が聞こえた。
ジュカはそちらを見もせずに息を吐いた。

「・・てめぇまだいたのか」

ジュカは壁から僅かに顔を覗かせ、人のいない路地を見た。
まだ今日の的はこない。

「俺、絶対諦めません」

あれから数日が経ったが、ラベは延々ジュカの後をストーカーしていた。
ラベは真面目な顔をしてジュカを見たが、不意に口を塞がれた。

「解ったから静かにしろ」

細い指に口を塞がれ、ラベは黙った。
やがてジュカは両手で銃を握りしめた。
そして壁から飛び出した。
ラベはそれを止める事も出来ず、目を見開く。


ダン、酷い音がなって辺りに血が飛び散った。


「う・・っ」

ラベは血の香りを嗅ぎ、吐き気を覚えその場にうずくまった。

「・・こんなのでへばってんのか」

上から声が聞こえて顔をあげる。
壁の向こうから戻ってきたジュカが頬の返り血を拭い、歩き出した。
当たり前だと言っても良かったのだが、ラベは両手を握り締める。

「へ・・平気ですっ・・!こんくらいッ」

ラベは叫びながら立ち上がり、ジュカの後を追った。
吐き気を感じつつも後を追っていると、ジュカはどこと無くふらふらしている気がした。
勝手にジュカの後を追って暫くになるが、ジュカは時々ふらふらしているような気がする。

「ジュカさ・・」

ラベが手を伸ばした瞬間、ジュカの上体が傾いた。

「っ・・」

ジュカが後ろに倒れてきて、ラベは咄嗟にそれを受け止めた。

「ジュカさん!?」

叫んだ途端、後ろから数人の足音が聞こえ慌ててラベはジュカを抱えて立ち上がった。
先程ジュカが殺害した奴の仲間かもしれないのだ。
乱れた呼吸を繰り返しながらジュカはうっすらと目を開いた。

「ッ・・下ろ・・せ・・っ何の・・真似、だ・・」

息も絶え絶えにジュカは呟く、
しかしラベは無我夢中で走っている為そんな事を聞いて等いなかった。


←and more
No.27 コハクマガイ vol.1 / 携帯 / Comment*0 // PageTop▲

2010.12.22  <<19:04



ふあーん!滅茶滅茶サボってた所為で年明けちゃいそうだようぅぅ!(※年は自動的に明けます)

魔月 霰っていうのは私・・なんですか?(聞くな

はい。申し訳ないと思う割には、あげられそうなものがないので

今 書 き 下 ろ し ま す !(ばばーん)


これも、今年中にわれのサイト全部更新してやる計画の内(建前)なのです・・ご了承←

++++++++++++++++++++++++++++++++++++


変 温 動 物 の 正 し い 飼 い 方

「さ。」

確かに外は寒い。窓の外の空気はひんやりしていて、その所為でいつもより景色が済んで見える。
その内雪でもちらつくのでは無いだろうか。
しかしここは室内。暖房でぬくぬくと温めてある。
そんな事にも関わらず、更に毛布を巻き付け毛布だるまになった一匹の・・いや、一人の、蜥蜴。

「さっ・・みぃ!!!!」

犬でも吠えているかのような大声が、毛布の中から文句を吐き捨てた。
それが頭にコツンと音を立てて当たったような気がして、吉乃は頭を掻いた。

「だからぁ、悪かったって。今部屋暖かいからさぁ、出てこいよー凌紅ー」

溜息と共に、呆れた声色で謝るが毛布は僅かに身じろぎをするだけで何も言わない。
呼びかけにも応じない。どうやら怒っているようだ。
それもそのハズ。家を出るときに暖房を入れ忘れて出て来た為、半日この室内は寒々としていた事になる。
彼は死にかけていたに違いない。

「よっしゃ・・分かった、俺が暖めてやるからこい」

一人でぼんやりするのも暇だったため、冗談を飛ばすと見事に枕が飛んできて
今度こそ本当に頭にコツンと、いや、ぼすっと音を立てて当たってしまった。
うぐ、と声を出して思わず床に倒れ込んでしまった。

「・・・・。」

相変わらず何も言ってこない。もう一度溜息を零して、起き上がった。
枕を抱きしめながらも、どうしたもんかと困り果てる。

「今度は熱でぶっ倒れるぞコラァー。」

そんな事を言いながらも言い方は実に弱気である。
今度はもっと固くて頭に当たったら致命傷なものが飛んできそうな気がするからだ。
何を言っても出て来そうもない為、諦めてその毛布をジッと観察。
すると数分も経たない内に毛布の下からオレンジ色の髪が覗いた。

「うっせーんだよ・・まだ寒いっつの・・」

ギロ、と黄色い瞳がこちらを睨んできた。
吉乃は寧ろ暑いくらいに温まったのに、凌紅はそうじゃないらしい。
この不可思議な生物は、いつの間にかこの家に住み着いていた。
と、いうか。半年くらい前に吉乃が拾ってきたのだ。
元は何処にいたのか、一体どこからやってきたのか、それは未だに謎である。
眼鏡が似合わないから棄てられたんだと・・げほげほ。

「しょうがねえなー」

じっと、瞬きもせずにこちらを見てくる凌紅に苦笑を零しては
枕を持って立ち上がった。
近付いていく吉乃を見上げたまま、毛布からでもせずに不思議そうな顔をする。
すると急に凌紅のくるまっていた毛布を吉乃は剥がした。

「!?うわ!寒い!やめろ!」

凌紅は叫ぶと同時に勢いよく起き上がって、奪われた毛布を奪い返そうと手を伸ばす。
が、凌紅が毛布に触れる前にばっと毛布は広げられいつの間にか視界は毛布色に染まってしまった。

「・・ん、・・なん・・?」

何が起こったか分からず、凌紅は目を見開いた。それは先程いた空間。毛布の中だった。
凌紅は顔を出して吉乃を探そうと身じろぎをする。

「うわ。お前マジ冷たいな・・」

声が耳元で聞こえて、凌紅は顔を上げた。
いつの間にか毛布に仲良く二人で入っているではありませんか。

「凍ってんじゃねこれ。」
「凍ってるか馬鹿者・・」

凌紅は逃げ出しても良かったのだが、寒さ>羞恥の為動けずにいた。
いつの間にか抱きしめられているような形になっていたが、その温度にほっとする。
吉乃は明らかに人間のものではないオレンジ色の長めの髪を撫でながら、腕の中の冷たい温度にこっそり苦笑したのだった。


end
←and more
No.26 / 未分類 / Comment*0 // PageTop▲

2010.02.18  <<16:54



消えていく意識と視界の中で最後に見たのは
あの日だまりだった。


盲目ストロベリー


真っ暗な世界で唯一光る
その場所が俺の全てだった。


「奏歌さん…朝ですよ?」

日向はカーテンを開けながら、ベッドの中で寝息を立てている奏歌を呼んだ。
奏歌は小さく寝返りを打ってまた寝息を立てはじめた。

「……奏歌さん?」

日向はベッドに近づいて手探りで奏歌を捜す。
手に服の感触があたるとそれを掴んで揺すった。

「ん……ん?」

暫く揺すられて奏歌は薄く瞳を開く。
小さな声を聞くと日向は服から手を離した。

「起き…ました?」

日向の問いとほぼ同時くらいに奏歌はベッドから上半身だけを起こした。

「…ああ…おはよ…」

そんな奏歌の声を聞いて日向はほっとしたような笑みを浮かべた。

「おはようございます」


だからそんなのを壊したくなかったんだ。


「えと…奏歌さん…?」

日向は奏歌にお姫様抱っこのようにして運ばれながら呟いた。
しかし奏歌は離そうとしない。

「また色々と壊されても困るからな」

奏歌の言葉を聞いて日向は少し大人しくなる。

「…ごめんなさい…」

日向はしゅんとなり小さく弱々しい声で謝った。
そんな日向に対して奏歌は日向を椅子に下ろして頭をぐしゃぐしゃと撫でた。

「…嘘。俺がしたいだけだから…迷惑?」

ふ、と笑みを浮かべながら奏歌が言った。
日向は俯きがちに下を向く。

「迷惑…なんかじゃ…」

ならよかった、と奏歌は笑った。
日向はその明るい声を聞いて軽い罪悪感に見舞われる。
また気を使わせてしまった、と。
たまに自分のこの目が見えないせいで、と時々自己嫌悪に浸る。
奏歌の優しさを感じる度に嬉しさと同時に果てしない不安を感じる。
相手が今、どんな風に自分を見ているのだろうか、とか…。

二年前、日向はこの大きな家にやって来た。
真っ白な壁で青い屋根の綺麗なお家。
その瞳はそれを見ることは無いのだけれど。
事故で視力も両親も無くしてしまった日向を引き取ったのが
その大きな家に住む遠い親戚である奏歌だった。

日向は奏歌の家の家政婦という事になっているが盲目の日向は結局対した事は出来ず…。
だから無力な自分への苛立ちとそれでも優しくしてくれる奏歌への甘えとか罪悪感とかが段々日向を蝕んでいく。
もしこの目が見えたらとか…やっぱりそんな事ばかり考えてる。

「じゃ、行って来るから」

朝ご飯を食べ終わった後奏歌は静かに席を立って呟いた。
日向はその声を聞いて椅子から立ち上がった。

「あ…はい、行ってらっしゃい」

いつもより幾分か元気がない声が零れて、日向は慌てて笑みを浮かべた。

「お仕事頑張って下さい」

ばれませんように、と願いながら見えない背中を見送った。

ぱた、とドアが閉まった直後の静けさが嫌い。
どうしてこうも奏歌がいないだけで部屋が広く、淋しく感じてしまうのか解らない。
何も見えないというのに。
日向は小さく息を吐いて食器を手にとりカウンターの裏に回った。

綺麗な絵を描いている。
奏歌の仕事の内容はそれだけしか日向は知らない。
家の横に小さなアトリエがあって、奏歌は普段そこで絵を描いている。
行こうと思えば、会おうと思えばいつだって行けるのに、とてつもない不安に襲われる。
どうしてこんな心地になるのか解らなくていたたまれないから日向は毎日掃除をして過ごしていた。
簡単な掃除くらいしか盲目の日向には出来ないから。
だから家はいつもピカピカだけれどそれを見る事も無くて、自分では役立たずだと思っていて。
それでも奏歌は充分過ぎるくらいだ、って言ってくれるけど。

「日向あぁああっ!」

急に部屋のドアが凄い勢いで開いて日向はびく、と肩をすくませた。

「えー…と、藍兎くん?」

小さく首を傾げ日向は呟いた。
藍兎と呼ばれた少年は日向の前の席に許可なく座って

「日向ぁ…聞いてくれよ」

と勝手に話始めた。
彼、潤戸藍兎は奏歌いわく「変なガキ」だ。
歳は恐らく高校生くらいだと思われ、黒髪短髪で愛想のいい好少年だが平日の昼間からふらふらしていて
何処に住んでいるのか何をしているのかも全く謎な少年だ。
ある日突然家に乗り込んできて、俺を弟子にしてくれ!、と奏歌に志願してきた。
奏歌は、弟子はとらん、と断ったのだが週に二、三日ここに通うようになってしまった。
そんな謎少年だが日向は数少ない友達が出来て少し嬉しかった。
だから奏歌に、少しくらいは相手にしてあげたらどうですか、何て死ぬ思いで頼んで見たりもした。
そのお陰かどうかは解らないがどうやら最近は少し絵を描かせてくれるらしい。

「…だから俺さぁ、絶っっっ対双木さん家乗り込んでやろーって思って!」

藍兎が叫んだ。双木、というのは双木二葉の事だ。美容師をしている奏歌の友達だ。
奏歌のアトリエに押しかけた時に逢ってどうやら一目惚れしてしまったらしい。
男同士でも別に気にしねぇ!、らしい。
そんな風に多少強引だが、自分の意見を貫ける藍兎を日向は羨ましいと思っていた。

「…本当に藍兎くんは双木さんが好きなんだね」

日向がぽつりと呟いた言葉に藍兎はかあぁあと頬を染める。

「まッ、ま、まあねっ」

先程より少しばかり声が高くなった藍兎に日向は微笑んだ。

「そっかぁ…」

素直に誰かを愛してそれを素直に伝えられる藍兎を可愛いと思うと同時にすこし妬ましかった。
良く解らない感情に翻弄されている自分にはまだほど遠いから。

「日向は?」

突然、藍兎が呟いた。
日向は、え、と予想しなかった問いに声を零した。

「日向は好きな人とかいないの?やっぱ奏歌とか?」

考えてる、多分。
奏歌に対しての感情。

「……いないよ?」

日向は静かに呟いた。
もし、いたとしてもこんな感情は抱いてはいけない。


「ただいま」

暗い部屋に奏歌の声が響く。
いつもなら日向の、お帰りなさい、があるはずなのに今日は聞こえて来ない。

「日向?」

奏歌は電気のスイッチを押して中に入る。
部屋が明るくなりソファの上に眠っている日向を発見する。
奏歌は小さく笑みを零して日向の寝ているソファに座った。

「風邪引くぞ?」

だけれど小さな声で呟いた。そして日向の細い髪を撫でた。
日向は長い睫毛を揺らしながらも規則正しい寝息を立てている。

「日向…」

奏歌は日向の頬に指を沿わせてどうしようもなく泣きそうな感情に襲われた。

「……好きだ」

気持ちが膨らんで思わず喉から溢れてしまった。
言った後に本当に泣きそうになった。

「……そんな事…」

不意に日向の形のいい唇が動いてそんな声が零れた。

「日向…っ?」

奏歌は驚き目を丸くする。まさか、起きていたなんて。

「俺っ…良く解らないんです…」

日向は上半身を起こして呟いた。
心なしか肩が震えている。

「俺はっ…、ぁ」

言いかけて、日向の瞳からぼたぼたと涙が零れ始めた。奏歌も日向自身も驚いたように目を丸くした。

「ひな…」

奏歌は日向に触れようとしたか、が日向はその手を払い退けてソファから立ち上がった。

「ごめ…なさ……」

日向は小さく呟いていたたまれなくなったように唇を噛み締めて走り出した。
奏歌は後を追いかけようとして立ち上がったが、日向、と呼んだだけで追いかける事が出来なかった。
奏歌はソファに崩れるように座り込み、片手で額を押さえた。


「はっ…は…」

家を飛び出してただやみくもに走っていた日向は息が出来なくなってようやく立ち止まった。
ああ、ここはどこだろう。
何も見えない、何も分からない。

「…ッ…ぅ」

日向はその場に座り込んで小さく声をあげながら泣き始めた。
どうしてこんなに胸が締め付けられるのか解らない、どうして奏歌の事を考えるとこんなに泣き出しそうになるのか解らない。

「…ひーちゃん…?」

急に声が聞こえて日向はびく、と肩を強張らせた。

「やっぱひーちゃんや」

靴の音が近くで止まって日向は恐る恐る顔をあげた。
そこにいたのは不思議そうな顔をした双木二葉だった。
もちろん見えた訳ではない。日向はその声と喋り方で二葉だと悟った。

「なみ…きさ…」

日向は涙でぐしゃぐしゃになった顔を双木に向けた。
二葉は日向の顔を見て目を丸くした後、日向の前にしゃがみこんで日向の頭を撫でた。

「あぁあ、可愛い顔が台なしやな」

二葉はいつものような優しい声色で呟いた。そして日向の腕を掴んで立ち上がった。
日向は驚きつつも立ち上がる。

「寒いやろ」

日向が、え、という前に二葉は日向をぐい、と引っ張って歩き出した。
日向はどうしようかと思いつついくあても特になかったので二葉についていく事にした。


「入り」
暫く歩いた後、階段を登って二葉が呟いた。
日向は小さく頷いて二葉に連れられるまま恐らく二葉の家らしき所に入った。

「ここ座っててな。」

二葉にそう言われて日向はソファに座らされた。
日向はがちゃがちゃという物音を聞きながら先程の奏歌の告白を思い出した。
好きだ、という意味。急に頬がかぁぁ、と染まった。

「珈琲やけど大丈夫?」

二葉から珈琲の入ったカップを受け取り、日向は小さく頭を下げた。

「はい…ありがとうございます」

日向は珈琲を口に流しながらその暖かさになんだか泣きそうになった。

「奏には連絡しとくから」

二葉の言葉に日向はまたお礼を呟いた。
迷惑をかけたくないのに迷惑をかけまくっている、というジレンマ。
でも、奏歌に言った事は本当の事だ。好きとか嫌いとか、解らない。
一つだけ解るのは、自分が無力で奏歌に迷惑をかけているという事だけ。

「ひーちゃんは、ひーちゃんが思うとるよりええ子やん?」

とさ、と日向の横に座りつつ二葉が呟いた。
日向は、え、と声を零す。

「…やし、皆ひーちゃんの事大事にしてんで?」

な?、と二葉が呟いた。
その瞬間に引っ込んでいたはずの涙がまた溢れ出て来た。
よしよし、と二葉が頭を撫でてくる。
日向はまた甘えていると思いながらも、二葉に頭を撫でられた。


ひーちゃんはもっと甘えてええんやで、そんな言葉はとても優しくて。
だけれど自分にその資格は無いと思われて。
まだぐるぐると葛藤してそれは迷宮入りしてしまいそうな勢いだった。


暫く泣いた後、日向は泣き腫らした目を二葉に向けた。

「あの…双木さん…」

日向の掠れた声に二葉は、ん?、と返事を返した。

「俺…帰ります」

日向のその言葉に驚いたように目を見開いた二葉だったがすぐに微笑んで

「そっか」

と返事を返した。


ふらふらと歩いていた俺を拾ってくれたのは
紛れもなく、俺の光だった。
そしてそれは俺の一番だった。


「日向…!」

ドアの向こうで奏歌が心底ホッとしたように呟いた。
日向はしゅんと俯いたまま、ごめんなさい、と子供のように謝った。

「じゃ、俺行くわ」

送って来た二葉が呟き、ありがとう、を二人から言われた。

「また遊びに来ぃや?」

な、と笑って二葉は帰って行ってしまった。
日向は心の中でお礼を呟いたのだった。


「ごめんなさい…」

リビングのドアが閉まった瞬間日向は俯きがちに謝った。
かたかたと心なしか肩が震えている。

「…俺こそごめんな」

いつものような優しい声色、でもどこか哀しい響きだった。

「あんな事してびっくりするよな…」

奏歌の言葉に、そうじゃない、といえなかった自分を呪いながら日向は顔をあげた。

「でも本当に日向が…」

言いかけて、奏歌は日向を愛しげに見つめて目を閉じた。

「ごめん、こんな奴と一緒に住めないよな」

呟かれた奏歌の悲しい響きに日向は

「何…言って…」

と呆然と呟いた。
まさかそんな事を言われる何て思ってなくて、身体からさあっと血の気が引くのを感じた。

「だって…気持ち悪いだろ?」

自嘲気味な声が日向の耳に届く。
日向は服の端をぎゅっと握りしめた。
ついでに唇み噛み締める。
日向は何も言えなかった。


もしかしたら俺はもう要らないのかな、ううん最初から邪魔だったんだ、ああ、今気付いた。


俺はこの人が、好きなんだ。



「日向…?」

頭の中で流れる言葉に日向は絶望していた。
ついにはもう死んでしまおうかとも考えてしまっている。

「日向…っ!」

急に肩を掴まれて日向ははっとなり顔をあげる。
そこで日向はようやく自分が泣いてる事に気付いて慌てて頬の涙を拭った。

「ごめんなさッ…」

謝って涙を拭ってもまた溢れてくる。
胸が張り裂けそうに痛くて、何も見えなくて、この思いも空回りして、日向はとうとう顔を覆って泣きはじめた。

「ごめんなさい…ごめんなさ…っ」

謝る事しか出来なくてまた出ていってしまおうかと思った瞬間、不意にふわりと何か暖かいものに包まれた。
それが奏歌だとすぐに解った。

「泣く…なよ…」

奏歌の切なげな言葉に日向は何とか泣き止もうとするが、そうする度に余計に涙が出てくる。

「はい…はいっ」

いいながら涙を拭う。
心を落ち着かせて日向は奏歌を見上げた。

「俺…は……臆病でいつも人の顔色ばかり伺ってて…奏歌さんにとって俺って何なんだろう、とか迷惑かけてないだろうか、とか
そんな事ばかり考えてて…ついには奏歌さんや双木さんの優しさまで疑い出しそうで…自分が嫌になってきてて」


どんなに明るい所にいても視界は真っ暗なままで
聞こえる声も何処から言われているのか解らなくて、だけど奏歌のこの腕の中だけは暖かくて、ちゃんとここにいる、って解る。

「奏歌さんの言葉はいつも優しくて、暖かくて嬉しいんです…あの時も本当は嬉しかった。」

どうしたら、とかなんで、とかそればかりが先立って嬉しさが飛んでしまった。

「でも…俺なんかっ…て」

多分、ううん絶対釣り合わないと思った。
そしたら急に恥ずかしくなって、自分は何て愚かで無力な人間なんだろうと思ったら涙が零れてきて思わず走り出してしまっていた。

「…日向はそのままでいいよ?」

奏歌の言葉に、え、と声を零す。
自分は、変わらなきゃ変わらなきゃと思っていたのにまさかそんな事を言われるとは思わなかったから。

「俺はそのままの日向が好きだよ…」

そうだ、いつも取り残されているのは自分だけなんだ。
こんなに、自分を評価してくれる人がいるのに。

「気付かなかった?」

日向は奏歌を見上げた。
何も写らないのに、光を見た気がした。

「今…気付きました」


酷いジレンマの嵐が
いつまでもいつまでも胸に吹き荒れていて
もう一生この空は晴れないんだって思っていた。
だけれど案外直ぐ近くに晴天は見えていて。
そんな盲目さにまだまだ翻弄されそうだけれど…。

End
←and more
No.25 盲目ストロベリー / 携帯 / Comment*0 // PageTop▲

2009.10.20  <<16:46



大分さぼってた 笑


++++++++++++++

「おい、てめぇ。」

不意に呼び止められたのは、放課後。
帰宅部の紫紅が家に帰ろうとした時の事だった。
振り返ると、そこにはものすごい形相の黒髪の生徒が立っていた。

「面かせよ」

「・・・はい?」


最悪・・というより、絶体絶命だ。
今、紫紅はその黒髪の生徒に「探偵部」というなんとも意味不明な部室に連行されてしまった。
そして、先ほどからその黒髪の生徒にじとーっと全身穴が空くほど見つめられている。
何か、怖い。私・・いや俺、殴られたりするのかな。
紫紅はびくびくしながらもその生徒を見上げた。

「あのー・・何か、用・・ですか?」

恐る恐る聞いてみる。
男にはなるし、変な人に変なとこに連れてこられるし・・。
女だったら、襲われちゃうかもキャー、とか思うけど。今、男だし。

「用・・だと?」

ギロリと睨まれる。死ぬ。死ねる。
紫紅は心の中で泣きながら必死に自分の心に鞭を打った。
落ち着け、落ち着けーっ!私はただ可愛いだけの女の子よー!
完全に自分が男という事を忘れてしまった紫紅は何とか相手から目を逸らした。

「何でてめぇ何かなのかが分からん・・むかつく」

生徒はゆっくり、ゆっくりと近寄ってきてもう紫紅の鼻の先まで来ている。
逃げなきゃ、と後ずさるが、もうそこは壁でどこにも行けない。
やだ、やだ、殺されるーーーっ!!!!
叫ぼうにも力がでない。足ががくがくする。
紫紅は思わず目をギュッとつぶってしまった。
その瞬間、急にガラッというドアの開く音と共に

「俺、参上~」

そんな、のんきな声が聞こえてきた。
そして瞬時にその声が璃呼だと分かり、紫紅は目を開けて視界の中に璃呼を入れた。

「・・・お前等何してんの・・?」

完全に男になりきっている璃呼は、不思議そうにこちらを見ている。
紫紅は慌てて璃呼の後ろに回り、黒髪の生徒を指さした。

「り、璃呼こ、この人がっ・・!」

さっきまでの恐怖で上手く舌が回らなかったが、ああ?、と未だに紫紅と邪魔をした璃呼を睨んでいる黒髪の生徒と紫紅を見て
何か分かったのか、あーなるほど、と璃呼は呟き黒髪の生徒の肩をぽんと叩いた。

「いや、俺は応援するけどね。そういうのは夜やんなさい」

ふふふ腐☆、と笑う璃呼。
違うってばーー!!!、と言いたかったが紫紅はただ立っているだけでやっとだった。

No.24 バラバラエキスパート! vol.3 / 連載 / Comment*0 // PageTop▲

プロフィール

魔月 霰

Author:魔月 霰
ヲタクで腐女子、萌えない黒髪眼鏡。
真面目そうな顔してて頭の中は超腐ってます。
一応十代だが年より老けてると言われる。

ブログでは基本的にblの話ばっかりです。
軽く15禁です。苦手な方、御子様は観覧は御遠慮下さい

カウンター

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

拍手

拍手する

時計

インテリア 雑貨 エコロジー

リンク

検索フォーム

RSSリンクの表示

ブロとも申請フォーム

QRコード

QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。