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アトラクションデイズ

  なんでとか、そんなの関係無い。ただ君が、笑うだけだから。
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2009.03.27  <<22:12



研究室の前を通って突き当たりを左に。
立ち入り禁止、でかでかとかかれた看板を横切って突き当たりの扉。
その奥の階段、76段下りた先。
そこにいるのは凶悪なモンスターでも犯罪者でもなく、ただ一人の、
まだ翼の折れていない、ダテンシ。


薔薇色スフィア


ピンク色の歪んだ世界。
夢とか幻とかあこがれとか、ずっとそういうものを抱いてきたのにそこは腐りきった世界だった。
派手な色、だけど毒。それはまさに灰腐。
だけれど、自分だってそれを腐っているとさげすむほど綺麗なモノではなくて
その世界とほぼ同色かもしれない自分にも、嫌悪。
頼るものも無くて、ああこれが地獄というのか、と一人で笑ったのを覚えている。
綺麗ね、羨ましいわ、といわれていたこの銀色の髪だって、気色悪いって妙な目で見られて。
お前らだって、と叫ぼうとしたら案の定その所為で変な奴等に後ろから殴られた。
薄れ行く意識の中で、卑怯、と思ったと同時に、
もしかしたら何処かでコレを望んでいたのかも知れない、と錯覚してやった。
だけど途方に暮れて野垂れ死ぬよりかは、多分良いかもしれない、とは、本気で思ったけど。

真っ白い肌が更に真っ白くなりそうだな、とその真っ暗な地下室でいい加減ギリギリ痛み始めた
手錠で動きを封じられた手首を見つめながら、思った時、急に真っ白な灯りが飛び込んできた。
何だか久々に地上に出て来たもぐらの気分、またどうでもいい事を考えながら眼を細めた。
真っ白な光の中で蠢く誰かの影を、狭い視界の中捕らえながら
ああ相手も眩しいかも知れない、と思った。
この銀色の髪は、全ての光を跳ね返すって、誰かが言ってたから・・。


「あー・・ていうか、どちら様?見ての通り何のお持て成しも出来ませんが・・」

冷たいコンクリートで覆われた真っ暗な地下室に、ラエの声が谺した。
もう約3日くらい閉じ込められているのに、ラエの声は何処か未だ生き生きとしていた。
目の前で入って来たはいいがずっと棒立ちしている人物を不審そうに見上げつつも
3日ぶりに見る動く物なので、ラエは少しはしゃいでいた。

「あ、ていうか、助けに来てくれたとか?なるべくそういうの希望なんだけど」

ラエは嬉しそうな声を出してみた。もしかしたら、という希望をかけて。
ここを出ても他に行く宛てなんてないし痛いの意外だったらなんでもいいいんだけど、とも思っていたけど。
暗くて、姿は良く見えないが一向に返事を返す気配のない相手にラエは小さく溜息紛いの息を吐いて

「ちょっと・・聞いてんの?」

・・と不満たっぷりに呟いてみた。
数秒の間があって、ようやく相手が動いた。
こつこつ、と足音を立ててこちらに近付いてくる。それでようやく、相手の姿が大体分かった。
白衣を着ている、男・・だと。相手がラエの前にしゃがんだので、それで顔も分かった。
真っ黒くて細い瞳の、色の白い顔。短い、瞳と同じ真っ黒の髪。

「な・・なに?」

想像していたよりも綺麗で細い相手に、少々驚きつつもラエは声を出した。
男はす、と片手を差し出してくる。ラエはいきなりのことだったので、びく、と肩を竦めた。
男はラエの、3日前強制的に切られて、背中辺りまであったのが
肩に掛かるか掛からないかというくらいにまで短くなった銀色の髪に触れてきた。
ラエは恐る恐る瞳を開けて、
髪に向けられたその黒い瞳を、何やってんだこいつ、と言った具合に不思議そうに見つめた。

「綺麗だな」

ここに入って来てから、初めて喋った相手にラエは、なんだちゃんと喋れるじゃん、と安心しつつも
言われた言葉に、は?、と声を零して固まる。
相手の視線が相変わらず髪に注がれているのに気付くとラエの時間はまた動き出す。

「な、なんだ、髪ね」

何を焦っているのやら、と自分自身に吐き気を感じつつもラエは慌てて訂正をした。
相手は特に気にしておらず、先程からずっと髪の髪を弄っている。

「・・切られたのか?」

相手がしてきた質問、初めての。
3日前は答えられない質問攻めにあっていたから、ラエは何だか安堵感を覚えた。
相手の聴き方は、優しいし、答えられる。

「・・・うん。本当は、背中まで伸ばしてたんだけど」

まあ自分でもいい加減切ろうと思ってたから良かったんだけどね、と心の中で呟いた。
母親や近所の人が、綺麗だから伸ばしなさい伸ばしなさい、って煩いから伸ばしてただけだし、と。

「・・・・勿体ない事しやがって・・」

小さな声で相手は吐き捨てるように呟いた。
その先程の優しい声色と全然違う冷たい声にラエは少し驚いたが、黙っておいた。

「・・・・あの、さ・・それで、あんたなんなの?」

・・代わりに、ずっと気になっていたことを思い切って聞いてみた。
相手は白衣だし、多分『けんきゅういん』とかいうやつだろう、と。
相手は相変わらずラエの髪を弄りながら

「俺か?俺、は・・・シファ。」

聞かれた事に驚いたように微かに表情を変えた後、そう呟いた。
名前を聞いてんじゃねえよ、と思いつつもラエは、ふーん、と一応返事を返して置いた。

「そ、じゃあシファ。」

そして呼んでみた。
初めて聞く名前は、とりあえず呼ぶのが礼儀だろうというのがラエの考えだからだ。

「お前は?名前」

すぐに返ってきた質問。
ラエは、どうでもいいけど髪離せ、といい加減うざったくなってきたのか
頭の中でそればかりを繰り返しながらも。

「・・・ラエ」

・・とちょっと無愛想に返してみた。だけどシファはふ、と小さく微笑んだ。
その笑みに何故だかラエは、どき、という胸の高鳴りを覚える。

「ラエ・・か、お前に合ってる」

言われた言葉に、ラエはまた固まる。
合ってる、というのが誉め言葉なのか何なのかも分からないのに、かぁぁぁ、と顔が熱くなる。
何でこんな事になるのか、自分でも分からない。

「あ・・・・そ、・・そりゃ、ど、どうも・・」

何でこんなに動揺してんだよ、ばかじゃねえの、俺は乙女か、と自分を罵りながらも
何とか言葉を紡いだ。
シファはまた、小さく、だけど今度はちょっとだけ楽しそうに微笑んで
不意に髪を弄っていない方の手の人差し指をラエの唇にあててきた。
ラエはまた、何してんだよこいつ、と思いながら不思議そうにシファを見上げた。

「これから、何があっても叫ばないで貰える?」

急にシファが呟いた言葉にラエはぽか、と口を開けて、はぇ?、と声を零した。
叫ばないでって叫ぶ事するのかよ、と一気に不安になる。

「・・でも、俺・・痛いの嫌なんだけど・・」

ラエはおどおどと目を泳がせながら呟いた。
拷問とかされるなら、多分全力で目の前の細身の男を蹴っ飛ばして泣き喚くだろう。
だけどシファは、痛くはないと思うけど、とちょっと考えてから呟いた。
ラエはその言葉を聞いて、少し安堵する。
こんな風に直ぐに人の言う事を信じるからこんな所に閉じ込められているのかも知れないけれど。

「じゃあ・・いいけど」

痛く無いのならね、とラエは付け足して言った。
シファは、そう、とだけ言うと髪を弄っていた手をする、と頭に沿わすように髪の中に滑り込ませてきた。
ラエは髪の中に手を滑り込まされる、というされたことのない行為に驚き、びく、と肩を竦める。

「じっとしてて」

シファが耳元で囁く。
ラエは、う・・うん、と頷きながらも今更ながら何をされるのだろうと不安になってくる。
その瞬間、いつもそうだ、と思った。
いつも後悔している。後悔は終わった後にしか来ないものなのに。
そんなラエを他所にシファは髪の中に滑り込ませている手を髪を解かすように滑らせて
ラエを撫でている。

「・・ずっと、あの時の詫びがしたかった」

耳元でぽつりとシファが呟いた声に、え、と思ったがラエは黙っておいた。
シファは不意にラエの短い髪に唇を寄せてきて、そのまま首筋にキスを落とした。
ラエはまたびく、と肩を竦める。そんな事をされるなんて予想もしなかったのだ。

「いッ・・」

急に首から頬に移った唇に、ラエは等々我慢していた声を零した。
叫ばないように何とか押さえたから、変な声になってしまったが。
それこそ本当に、予想もしていなかった。
拷問される事は予想していたが、まさか男にいきなり頬チューされるとは思いもしなかった。
ラエは何だか少し怖くなってきた。小さく身じろぎする。かしゃ、と手錠の冷たい音が響き渡る。
軽く恐怖を覚えているラエに気遣いもせずシファは次はラエの唇に同じモノを押し当ててきた。
ラエは、薄く予想はしていたのだが、やっぱり驚いて目を大きく見開く。

「っ・・!」

声にならない声。
それってどんなのだろう、と思ってたけど正にこんな風な事を言うんだろう、とラエは思い知った。
言葉が喉に詰まって出て来ないとか、声にしたくても出来ないとか。

「ん・・っ、ん゛ーっ!」

ラエは小さく身じろぎをしながら、離せ、といいったように声を上げた。
それでも叫ばないと約束したから、小さな、小さな声でだけども。
だけれどやっぱりシファは離してくれなくてそれどころか
初めてのラエにいきなり濃い体験をさせてこようとしている。
そう、食いしばっていたラエの歯を無理矢理割って舌を侵入させてきたのだ。

「は・・、んっ・・んぅっ・・っん゛ッ」

どういう風に息を吸ったらいいのかも分からないし、シファの舌が自らの舌を追いかけ回す。
ぬるぬるしてて、気持ち悪いとも気持ちいいとも何とも言えない感触。
ラエはじわりと涙を滲ませた瞳を、ぎゅっと閉じた。
どんな顔をすればいいのかも分からないし、もう本当に怖かったから。
息苦しい、何だかどうにかなってしまいそうだった。

「あ・・ん、ッは・・ぅ、んっ・・」

頬に涙が伝うのが分かった。
それと、シファか自分かどちらのものか分からない唾液が口の端から零れて顎を伝う。
そんなので、ラエの顔はもうぐちゃぐちゃだった。
手錠のかしゃかしゃ、という音がやけに耳に付く。・・というより自分が意識しているのかも知れない。
そちらに気を向けていないと、自らとシファの口付けによって出される卑猥な音を聞いてしまうから。

「・・ん・・っ・・は、・・はぁ・・はっ」

本気で息苦しくなったから、ラエは手錠のついた手でシファの胸を小さく押した。
それでようやく口が離されて、ラエはようやくまともに息を吸うことが出来た。
背中の壁に深く寄り掛かって、ラエは暫く浅い息を繰り返していた。
シファは、唇から滴るもうぐちゃぐちゃにまざってどちらのともつかない唾液を片手で拭っている。
ラエは酸素を求める肺に空気を送り続けながらも、シファをじっと見上げた。

「・・はっ・・な・・ん、で・・こん・・な、事・・」

するんだよ、とまでは言えなかった。
なんだか胸が詰まって、言葉が出て来なかったのだ。
口は離されたのに、何故だかぼたぼたと涙が零れてしまう。
それは恐怖から解放されて気がゆるんだから、なのか
それとも別の何かなのか、ラエには分からなかった。

「・・・悪い」

シファは小さく、弱々しい声でそう謝った。
そのしゅんとなったシファに、ラエは拍子抜けして怒る気も一緒に抜けていってしまったようだった。
ラエは小さく溜息を零して俯くようにして自分の手元を見つめた。
真っ白な肌に、銀色の大きな手錠。今まで一度も見たことが無い光景だった。

「もういいよ・・、夢やら希望がある訳じゃないし。もうどうなってもいいいっていうか。」

さっきのはちょっとびっくりしたけど・・、と諦めたようにラエは呟いた。
多分此処で餓死していくんだろう、と昨日くらいに覚悟は決めてしまったから
驚きはするだろうが、何があってももう嫌だと嘆いたりはしないだろう。・・痛いの以外は。

「・・・此処に閉じ込められたからか」

ラエはごろん、と横になってみた。
コンクリートの冷たさが、伝わってくる。
シファはこちらをジッと見ている。
ラエは見つめ合うのも何だか気恥ずかしくて、ただ真っ暗なだけの天井を見上げた。

「いや・・多分ずっと前から・・こういう性格なのかもね、俺」

ははは、と力の入っていない笑みを零す。
いつもそうだ。何でも直ぐに諦めて、残るのは後悔ばかり。
ネガティブにポジティブをして、鋭い人に、あなたそれはただのツヨガリじゃない、って指摘される。
だけどこれは強がりでも何でも無い。強がりだったら、やめようと思えば止めれるはず。
だけども、止めようと思っても止めれない。だから多分これは性格が、そうなんだ。

「お前はいつもそうやって諦めてきたのか」

す、とシファの顔が視界に入ってくる。
だけどやっぱり暗くて、あんまり見えないんだけれど。

「・・・でなきゃこんなとこでこんな顔して寝転がってないよ」

何時の間にか、止まっていた涙の跡と口の端から零れていた唾液の後を片手で拭った。
きっと今シファの前にさらけ出て居る自分の顔は、誰よりも酷くて醜いだろう、とラエは思った。
疲労と諦めと涙と唾液でぐちゃぐちゃの顔。想像しただけで吐き気がする。
だけれどシファは違う。綺麗な、綺麗な顔をしている。
こんな顔をしている人間が明日を強く生き抜くのだろう、と思った。その瞬間ラエは、はっ、となった。
それは忘れていた大事な事を思い出したかのような感覚に似ていた。

「・・あ、もしかして俺もう死んじゃうのかも」

口に出して初めて解った。俺はもう死ぬのだ、と。
どうりでおかしいと思った。3日も何も食べてないのにこんなに意識がハッキリしている理由とか
何でずっと真っ暗なのに3日経ったことが分かるのかとかずっと自分でも疑問に思っていた事が
これで一気に解決できた。

「・・・お前何言ってんだ?」

不思議そうにシファが呟く。
それもそうだろう、いきなり目の前の生き生きと喋っていて
全然死にそうもない人間が、俺死ぬのかも、とか言い出したのだから。
ラエはもうすっかり死ぬ気でいるのか、寝転がったままの状態で胸の上で指を組んで眼を閉じた。
頭の中で数少ない楽しい思い出なんかを流しながら。

「・・おい、ラエ?」

シファが声をかける。あ、初めてラエって呼ばれたかもしれない、と頭の中で呟く。
す、とシファの手がまたラエの髪の中に滑り込んでくる。
ラエは薄く目を開けて、シファを見上げた。

「まだ死んでないよ」

ラエの言葉に、シファは大きく目を見開いた後、くすくすと笑い出した。
ラエは笑い出すシファに、むかついて起き上がる。

「な、笑うなよっ!人が真面目に言ってんのに」

信じられない、と言ったように吐き捨てる。
シファはツボにはまってしまったのかずっと笑っている。

「・・っ・・ラエ・・お前3日くらい経ったと思ってるだろ」

笑いながら呟くシファ。
爆笑しているシファを会って間もないのに何だか珍しいとラエは思ってしまった。
見た目のクールさから、そんなのには程遠いと勝手に思い込んでいたからだ。

「そうだけどそれが何?」

何をそんな当たり前の事を、といったようにラエは返した。
シファは瞳に涙を浮かべながら未だ笑っている。
ラエは苛立ってきた。

「・・まださ、一日しか経ってないんだけど・・空腹で死ねるの?」

くすくすと、くすくすくすくすと笑いながらシファが呟く。
ラエは、かぁあぁぁぁ、と赤くなる。恥ずかしさで。

「な、な、な、なぁぁ・・」

ラエは目を大きく見開き、ぱくぱく、と動かす。
これこそ正に、声が出ない。言葉が喉に詰まって。

「・・・なぁんだぁ・・」

どうりでお腹も空かないはずだよ、これで本当に謎が解けた。
ラエはほっとしたと同時に、少しだけ絶望感を感じた。
やっぱり死というものには、果てない憧れを抱くから。

「・・やっぱ変わってないな」

ようやく笑いがおさまったシファが小さな声で呟く。
ラエはまた、え、となる。デジャブ・・・じゃない、さっきもあった。

「・・・・ていうかさっきから何それ・・・?」

まるで、前から会ってたみたいな言い方をする。
だけれどラエにこんな知り合いはいない。
相手の勘違いであんな事をされたのなら、最悪だ。まあ夢も希望も無いのだけれど。

「ああ・・・いや、何でも無い」

シファは適当に誤魔化すように呟いて、立ち上がった。
ラエはそれと同時にシファを追うために顔を上げる。

「一日しか経ってないとはいえ、腹減っただろ。」

上から降ってくる声。ラエはさっきシファがはぐらかした言葉の続きが気になって仕方が無いが、
確かに、お腹が空いてきた。うん、と素直に返事を返した。
・・と、急に身体がふわりと宙に浮いた。ラエは驚いて思わず声を零した。

「わ、何?」

ラエはびっくりして目を見開いたまま声を零す。
暗くて良く見えない。分かるのは、自分がふわふわ浮いている、という事。

「・・じっとしてて」

また、どこかで言いたような台詞。
ラエは言う通りにした。また何かされるかも、という疑いはその時はなかった。
こんなだからまた後悔ばかりするんだろうけど。
だけど何故か今は、何も無い、と思う事が出来た。

かつんかつん、と靴の音が聞こえる。
そうかこれは、階段を上ってる音だ・・という事は、自分はここからでられるって事で。
ラエは少しほっとした。
今度は絶望感も特になく、ただ、ああ良かったもう暗いだけの所は懲り懲りだ、とそんな気持ち。
暖かな温度を感じて、これはシファの腕の中なんだ、と思った。
こつん、とシファの胸に頭をくっつけてラエは何だか不思議な心地に陥った。



「銀色の・・・ああ・・思い出した」

そうだこれはあれに似ている。
あれは薔薇色の木漏れ日の中で見た、


......fin
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No.15 薔薇色スフィア / 小説 / Comment*0 // PageTop▲

2009.03.21  <<00:27




「名前呼ばれたから、びっくりした。」

がしゃがしゃとフェンスをつたって降りてきてまた冷たいコンクリートの上に足を付けた。
夏実はフェンスを背に蹲るように座って、猫を抱いている青年、山陽太を見上げてそう呟いた。

「俺、夏実、って名前だから・・ナツって呼ばれてて」

小さく呟く、と陽太は、へえ、と声を零した。
そして夏実と目を合わせるように床に座り込んだ。

「女の子・・みたいでしょ」

夏実は立てた膝に頬を寄せながら、ふ、と儚げに微笑んでそう呟いた。

「・・・うん」

陽太は小さく頷いて、数秒後小さく笑った。

「でも似合ってる。」

陽太の言葉に、夏実は少し驚いたように目を見開いた後またすぐに元のような真顔になって
足元にじゃれついてくる猫のナツへと目を落とした。

「この猫の友達?」

夏実はごろごろと気持ちよさげに眼を細めるナツの顎を撫でながらそう呟いた。
陽太は夏実の、友達、という言い方が何だかおかしくて笑みを零した。

「うん、まあ友達・・かな。俺がこいつを拾って・・それで何か懐いちゃって。
ナツに拾ったからナツ、なんて安易でしょ」

夏実は陽太の話に耳を傾けながら、ナツを抱きかかえて胸の中で撫でつけた。
ナツはうとうとと眠りの世界に落ちていきそうに眠そうな表情で小さく鳴いた。

「そう・・俺もだよ、夏に産まれたから夏実・・って。
・・案外そんな安易なものだよね・・名前なんて」

眼を細めながら何処か淋しげな表情の夏実は、ふ、とナツから目を離して、何処か遠くを見つめた。
陽太は何だか不意に泣きそうになってしまった。
夏実が何を言わんとしているのかも、分からないというのに。

「あ、でも」

何かを思いだしたかのように声を上げて、夏実は陽太の顔をジッと見て来た。
陽太はその夏実の白くて、意外と可愛い顔にどきっとしてしまった。

「太陽が、ひっくり返って陽太。・・・陽太は、良い名前だね」

小さく、どこか儚い声で呟いて、夏実は微笑んだ。
陽太はその瞬間、何かを喉に詰められたかのような感覚に陥った。
声も息も出来ない、そんな状態。
今宵初めて偶然会っただけの仲なのに、どうしてこんな事になるのか、陽太はまだ分からなかった。

「ナツ・・寝ちゃった」

夏実の腕の中で、抱かれるようにして眠りについている猫を見つめながら夏実は呟いた。
陽太はそう言われて、はっ、となりナツを見つめる。
ナツは目を閉じて心地よさそうな顔で規則正しい寝息を立てながら眠っていた。
その愛らしい姿に、思わず陽太も顔が綻んでしまった。
しかし次の瞬間、そんな表情もどこかに消え去ってしまう。
それはというと、夏実の足から零れる一筋の赤い液を見つけてしまったからだった。

「なあ・・血、出てるけど」

陽太は急にそれを見つけてしまって、心臓が止まりそうなほどの驚きを感じてしまった。
震える声で指摘すると夏実は、ああこれ、と何でも無いようにそう言った。

「・・さっきフェンスに引っ掛けちゃって怪我したのかもね」

まるで他人事のように夏実は呟いた。
白い肌にその赤が栄えていて、余計に痛々しく見せていた。
陽太は来ていた服のポケットに手を突っ込んだ・・しかし、中には何も入っておらず
ハンカチくらい持っとけよ、と頭の中で自分を叱りつけた。
それを見て夏実は緩く首を傾けて

「大丈夫だよ、これくらい・・別に痛くもないし」

そう呟いたのだった。
陽太はそんな他人事のようにしている夏実に酷く腹が立ってきてしまった。
それが何故なのかは分からないが、赤い液体が目に入る度に
頭に血が上るのを感じる。

「そんな事いうなよ。」

急に声のトーンを落として、陽太は呟いた。
夏実は相変わらず、なんで?、といったように陽太を見上げてくる。

「お前自分の身体何だから大事にしろよ・・折角綺麗なのに」

自分の事傷付けるなんて考えるだけで虫酸が走る。
この世の中には、死にたくなくても死んでいく人の方が多いというのに。
そんな事を頭の中で巡らせながら呟いたら、夏実が、え、という顔をした。
目を大きく見開いて驚きの色を浮かべながら。
それを見て陽太も、え、となった。そして急に恥ずかしくなってくる。
大事にしろよ・・折角綺麗なのに、綺麗なのに、綺麗なのに・・。
その言葉が頭の中でエコーが掛かって流れていく。

「あ、や、別にそういう意味じゃなくって!」

陽太は慌てて訂正しながら叫んだ。
そんな事男に言う台詞じゃないよな、と今度は自分に腹が立ってくる。
あたふたとパニック状態に陥っている陽太を他所に夏実はかしゃんと音を立ててフェンスに寄り掛かった。

「・・・ありがと」

思いもよらない事を夏実が呟いた。
陽太はまた、え、となった。何がどうなってその言葉が出てくるのか、分からなかったからだ。

「でも俺・・綺麗何かじゃない」

夏実はまた、陽太が泣きたくなるような淋しい表情を浮かべた。
案の定陽太は、泣きたくなってしまった。

「綺麗なんかじゃないよ・・」

夏実が繰り返す言葉。それをことごとく否定したくなった。
だけれど陽太は、初めて抱く意味の分からない感情とただ戦うしかなかった。
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No.14 猫より純情、空より過剰 2 / 連載 / Comment*0 // PageTop▲

2009.03.16  <<19:11



とっておきの場所で空を仰いで
その空はいつもより少しばかり晴れ渡っていて
涙なんか似合わない心地にしてくれた。

だけど、
にゃあという猫の鳴き声が聞こえて、
俺は急に予定を変更させられた。


より純情より過剰


コンクリートの上を裸足で歩くのは意外に難しく、慣れるまでジッとしていた。
慣れてくると足の裏からコンクリートの温度が伝わってきて
それはまるで死人のように冷たく固まっていて、込み上げる感情はただ、虚しい、という感情だった。
フェンスの向こう側に広がる世界は、つい先日まで自分も居た場所で
夜だという事に関わらず、忙しなく目線の下を歩く人々を眺めては苦笑を零した。
別に軽蔑している訳ではない。寧ろ尊敬している。
そういうものに私はなりたい、何て叫びながら生きてきたから。

コンクリートと同じく、冷たく固いフェンスに指を絡めた。
そしてガッシャガッシャと冷たい音を立ててフェンスをよじ登る。
裸足だから、フェンスに足をかけるのは痛い。でも我慢して登る。一番上まで登る。
一番上まで登っても、足の痛みは消えなくて
ふ、と見下ろすと、真っ白な足から一筋、赤い血がしたたり落ちていた。
ああ怪我しちゃっちゃんだ、とまた苦笑を零す。それはもう他人事のような笑みを。
ぽた、ぽた、と血は白いコンクリートの上に落ちていく。
今は未だ暖かいこの血も、もう後何秒かすればこのコンクリートやフェンスと同じく
冷たく固くなって、雨でも降ればあっという間に流れていってしまうだろう。

「あ、星だ」

下から上へ、顔を上げてぽつりと呟いた。
空にはわずかだが、星が輝いていた。その光は弱々しいけど、ちゃんとこの瞳に映っていた。
都会でも星って見えるんだ、と思いながらそれをぼんやりと眺めていた。
そして、初めてこの場所に来たときは酷かったな、と昔の事を思い出し始める。

あの日はどしゃ降りの雨の日で、傘も差さずにうろついていた。
ざぁざぁ、というよりバシャバシャと強い音が耳の直ぐ近くで聞こえていて
まるで滝に打たれるようだった。
その中を一人びしょ濡れになりながらとぼとぼと歩いて、辿り着いたのがこの廃墟の屋上だった。
屋上は雨をもっと近くに感じれて、悲しいような嬉しいような何だか複雑な気分だった。

それは今も変わらない。複雑な気分。
一つだけ分かるのは、ただ虚しいというだけ。
あの頃と今と、何か変わった事があるのだろうか。

ああ、あった一つだけ。
あの頃と比べて、今は少しばかり汚くなった。


「にゃあ」


次の瞬間、急に自分ではない別の声が聞こえた。
ぼーっとまるで別の世界に行っていたかのように空を見ていて、急に聞こえた声だからびっくりした。
振り返るとそこには一匹の茶色い猫がこちらを見て、にゃぁ、と甘えるような声で鳴いていた。
猫だ、とそれだけ思った。別に可愛いとか、触りたいとかそんな事は一切思わず。
ただ、猫か、とそれだけ。

「ナツー、どこいったぁー?」

次に聞こえてきたのは、猫でも自分でもないまた違う声。
今度もびっくりして、え、と小声を零してしまった。
声は足音共にどんどんこちらに近付いてくる。
知らない声、だけどナツ、という名前は知っていた。

「あ、いたーこんなとこに・・・・・い、た?」

真っ暗な闇から出て来たのは、知らない男だった。
向こうもびっくりしたように目を見開いてこちらを見ていた。
そして同じようにこちらも相手を見た。
にゃあ、猫だけがそう鳴いてその男の元へ走っていった。
暫くの沈黙の後、聞こえてきたのは。

「にゃあ」

やっぱり、猫の鳴き声だった。



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No.13 猫より純情、空より過剰 1 / 連載 / Comment*0 // PageTop▲

2009.03.11  <<23:04


ぼー、っとしてる。毎日覚束無く生きている。
何も考えていない・・というより何も考えられないのだ。
自分が飛んでも無い事をしたのは分かるのに、解決策なんて見つからないのに
だけど、諦めきれずにいる自分がどこかにいて
それを考えるとまた何かをしでかしそうで、何も考えたくない。
勉強やら生徒会の仕事やら、やってる時はあいつを、真を考えなくてもいいから
前よりもさぼらずにやっている。おかげで成績は右肩上がり。
でも、ちっとも調子が良いと言えない。
前より全然悪い。
図書館で、真の唇を奪ってもう一週間が経とうとしている。


「おい」

歩いていたら、急に後ろから声をかけられた。
おい、しか言われなかったがそれは確かに自分を呼んでいて。
振り返るとそこには、思いもしない人物が立っていた。

「・・し、真」

俺は動揺しつつ呟いた。
俺を呼んだ人物は、真だった。
いつものような無表情で、そしてその真っ直ぐな目で俺を見ていた。
その瞳は、久々に見たのだけれどでもやっぱりそれには心臓が高鳴った。

「・・・・・ちょっと来い」

真は暫くジッと俺を見上げた後、そう零して俺の腕を掴んで歩き出した。
俺は予想もしなかった言葉を言われて、え、としか言えず
気付いたら足が勝手に真の後を歩いていた。
どこに行くのか分からないし、自分も何を言うのか分からないがとりあえずついていってみる事にした。

真に腕を引っ張られながら歩いて、辿り着いた場所はあの図書室だった。
図書室は相変わらずしんと静まりかえっていて、人も見当たらなかった。
真は図書室に入るとドアを閉めて、俺をそのドアに押しつけた。
抵抗もせずにその場に突っ立っている俺を、真は俺を睨み上げてくる。

「お前は、俺が嫌いか?」

不意に問われた質問。俺の思考が数秒停止した。
寧ろその逆だよ、という言葉が喉に引っ掛かって、出て来ない。
真は俺の肩の服を掴んで、俯く。綺麗な長い前髪、の所為で顔の表情が見えない。

「それとも俺が馬鹿なのか・・?」

弱々しくて、小さな声。
どういう意味かよく解らない、俺はドアに押し付けられたまま突っ立って
目の前の真を見つめていた。

「・・・・・真?」

同じような、弱々しくて小さな声で相手を呼んだ。
真は肩の服を掴む力を強めて、ゆっくり、顔を上げた。

「・・俺・・お前が好きだ・・」


多分、同じ。


「・・・・へ?」


同じ事を、考えている。

拒絶されるって事はもう見えていて
だけど油断したら溢れてきてしまいそうで
隣に居られればそれで良い、とそう願っていたはずなのに
何時の間にかもっと近くに寄りたいなんて我が儘なことを思い始めて

多分同じ、多分、同じ。
言葉が喉に引っ掛かって、出て来なかったりしている。


今日は、思いもよらないことが起こる日だ。
そんな、どうでもいい事を頭の中で繰り返して、俺は腰が抜けたようにその場に座り込んでしまった。
実際腰が抜けてしまったのかも知れない。何だか上手く力が入らないのだ。
真は急に座りこんだ俺を心配そうに見ながら自分も座り込んで
涙で溜めた瞳を俺に向けた。
その瞳はやっぱり真っ直ぐで、澄んでいて、俺もつられて泣きそうになった。

「此処に通わなくなってさ、成績が良くなって仕事も出来るようになって
でも褒められたってぜんっぜん嬉しくないのな。夜寝るときも、その日何をしたか覚えてないし」

図書室に通っていた頃は、変わらない真の表情も毎日違う風に見えたりして
話した中身が薄いハズの内容も今でも鮮明に覚えていて
だけど最近は、何も覚えていない。誰と何を話したとか、そんな事覚えてない。

「真がいなきゃ、俺じゃいられない・・と、思うんだけど」

真がいなきゃ、明るさが取り柄ですって笑顔で言えないし
何でも楽しく過ごせないし、くだらない話だって出来ないと思う。
毎日必死で生きれてるのは、真が、いるからだから。

「そん・・なの・・俺も、一緒だ・・っ」

ぼろぼろ、真の瞳から大粒の涙が零れ落ちた。
いつも無表情だから何だか新鮮・・だけど、それも凄く可愛くて、
俺は思わず抱きしめてしまった。

「うん・・・俺ね、」


「真が好きだよ」


そしたら多分、だったら最初から言え、って泣きながら怒って
またその真っ直ぐな目を俺に向けて突然、ふ、と笑みを浮かべてくるんだろう。
そして俺を困らせる、

その微熱がまだ冷めないのなら、

.....end
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No.11 その微熱が冷めないのなら 3 / 小説 / Comment*0 // PageTop▲

2009.03.07  <<22:41




「・・・・・な、に?」

あ、やってしまった、と思った時はもう時既に遅しだった。
俺はいつものように図書室に行って、いつものように真の隣に座った。
図書室は珍しく人が居なくて、静かな空間が流れていた。
読み終わった本を返しに席を立った真に続いて、俺も席を立った。
カルガモ親子のように真の後を歩いて、真が本を返し、また新しい本を取って振り返る。
その瞬間、振り返った真がそれはそれは可愛く映りすぎてしまって
俺は思わず、真を押し倒してしまった。
それが、今の状況ばらばらに飛んでった本、驚きつつも不機嫌な顔の真。

「・・・おい、風斗」

聞いてるのか、と真が言うか言わないか、という瞬間
俺は真の唇に、自分の唇を押し当てていた。
俺何やってんだろう、こんなの駄目なのに、そう思うのに止められない自分がいる。

「・・っ」

真は小さく身じろぎをして、動かなくなった。
多分、生まれて初めてのキス。相手も同じだろうか、
そんなどうでも良い事を考えてる場合じゃないのに。
場合じゃ、ないのに。おかしい。多分俺はおかしい。
俺は真の口の中に自分の舌を侵入させた。すぐに真の舌を捕まえてそれをぎこちなく絡めてみたりした。
もちろんそんなの初めて。上手く出来ているのかとかよく解らない。
でも、それが気持ち悪くないことだけは確かで。

「っ・・ッッ」

真が投げ出された手を俺の肩に持ってきて、そして思いっきり引きはがされる。
俺はいきなりのことで驚いて、目を丸くした。
真は顔を赤らめつつ、浅い息を繰り返しながら

「・・っヘタクソ・・ッ殺す気か・・」

・・と口元から零れる唾液を拭いつつ呟いた。
俺はもう、え、と呟いて数秒思考が停止した。
自分がしたこととか、相手に言われた事とか、ぐちゃぐちゃに混ざって思考が働かなくなったのだろう。

「ご・・・めん」

俺も唾液を拭いながら、床に座り込み謝った。
声色に元気の欠片も無い。なんて馬鹿な事をしてしまったんだろう。
完全に、嫌われた。こんな、いきなり、生徒会長あるまじき行為・・。

「・・良く・・分からん」

暫く二人とも黙り込んで、それを不意に真が打ち破った。
俺はただ顔を上げて、真のその真っ直ぐな瞳を見つめる事しかできなかった。

「お前が何を考えてるのかとか、俺の事どう思ってるのかとか」

真は床に座り込んだまま、ゆっくりと俺に近付いて
俺を見上げるように見つめてきた。

「こんな事考えてる俺も分からない・・」

真は小さな声でそう呟くと、床に散らばった本を拾い集めて立ち上がり
さっさと図書室を出て行ってしまった。
俺は一人ぽつんと図書室に取り残されて、冷たい床に座り込んだまま溜息をついた。

「・・・・・・・・・・どういう意味だ?」

やっぱ、よく解んない。
でも一つだけ確かなこと、それは・・。
真が好きで、溜まらない、とそれだけ。
後は全部不確かなものばかりで・・・・・。


次の日、俺は図書室に行かなかった。
・・というか、行けなかった。多分もう、真には嫌われてるんだろうな、と思ったら行くにも行けなくて。
俺ってこんな弱い人間だっただろうか。
こんなに誰か一人のために、悩んだり出来るほど強かな人間だっただろうか。
あいつに会ってから、多分俺は変わっている。
俺は前よりも、ずっと人前でデフォルメを出せるようになっている。
それからあいつ無しでは、生きられなくなっているのかもしれない。

でも、もう会えない。


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No.10 その微熱が冷めないのなら 2 / 小説 / Comment*0 // PageTop▲

2009.03.06  <<19:20




油断したら、言いそうになる。
そしたら多分拒絶される。
だけど溜まらなく、
溜まらなく、そいつが好きで、
俺の胸は締め付けられるばかりで。


その微熱が冷めないのなら


初めて会った、というか言葉を交わした日のことを今でも鮮明に覚えている。

単純に言えば、嫌になった。だけど多分心情はもっと複雑怪奇で自分でも分からない。
別に今に始まった事じゃない。苛々して、泣き喚きたくなる。
それは、誰かと話している時でも、
あの日みたいに生徒会室に閉じこもって仕事を片付けている時でも起こる事だった。
あの日は丁度、俺みたいに作った真面目じゃなく本当に心の底から真面目君な副会長もいて
俺の、ちょっと散歩してくる、っていう言葉に副会長は大反論した。
俺はついに逃げてしまった。
生徒会長逃亡!なんてこれが放課後でなければ、新聞部にかかれていただろう。
意外と足の速い副会長に追われて、いきついたのは学校の端の図書室。
もしかしたら初めてくるかもしれないその扉を俺は迷わず開けた。

その時、一瞬時が止まった。

オレンジ色の光の中、真っ黒な瞳がゆっくりと此方に向けられ
不思議そうにジッとこちらを見つめてきた。その瞳から、目が離せなかった。

「・・・何?」

不機嫌そうな声色、それを聞いて先程の逃亡劇を思い出し、俺は図書室の扉を静かに閉めて

「か、かくまって?」

そう、呟いたのだった。
今時かくまって、ってなんだよ。漫画の読み過ぎだよ俺。
自分でつっこんで、急に恥ずかしくなった。
だけどそいつは顔色一つ変えずに

「・・・・別にいいけど」

呟いて、奥の方を見てまた俺の顔を見た。
俺は慌てて大きな本棚が立ち並ぶ奥へと行き、見つかりにくそうな所で隠れた。
暫くして副会長の声が聞こえて、また扉が閉まった。
だけど俺はそれ所じゃなかった、これがトキメキというのか、と意味の分からない事を考えながら
窓の外のオレンジの空を、ぼーっと見つめていた。


それから俺は、宮美真、という図書委員長に会いに今まで一度も行った事も無かった
図書室に通い詰めた。
とりあえず真の隣をキープして色々な話題を持ちかけてみるが
真はいつも本の世界にワープしていて、適当な返事しか返さなかった。
だけど俺はそれすらも楽しくて、ずっと真を観察していた。
色白いな、とか、髪さらさらだな、とか、本読んでるとき楽しそうだな、とか
でもあんま笑わないな、とかそんなどうでも良い事を考えながら。
ヘタしたら変な事しでかしそうな自分を抑えながら・・。


「真ってさぁ、綺麗な顔だよね」

毎度の如く本を読んでいる真の隣で、俺は呟いた。
今日の本のタイトル・・生物学のなんたら・・よくわかんねーや。って俺生徒会長なのに。

「・・あんたの方が綺麗だろ」

真の返事。え、と思って心臓がどきりと高鳴る。
たまにこういう事言い出すから、困る。
適当適当、これは適当、きっと本の中にある台詞を適当に言ったんだよ、
自惚れてしまいそうな自分にそう言い聞かせる。
でなきゃ、俺はバカだからすぐ調子に乗るんだろう。

「・・・なっ、なわけないじゃんかぁ」

ははははは、と力無く笑う。
どう考えても真の方が綺麗だ。多分俺にとって、世界一綺麗だと思う。

「何で?」

不意に本から目を離して、ジッと俺を見てくる。
何もかも見透かされているような、そんな綺麗な目。
真っ直ぐに向けられた瞳が、俺は少し苦手・・だけどそれからは目が離せなくて。

「な、な、なんで、って・・」

心臓がやばい。破裂しそうなくらい脈を打つ。
それはあんたが好きだからだよ!、喉まで出かかってる。
同様すんな、落ち着け落ち着け、言い聞かせる。

「嘘言う必要何て無いだろ」

かああああ、多分、漫画だったらそんな文字が書いてあるんだろう。
顔が熱い。いかん、ばれるって。ばれる、って・・・・。

「う・・・・うん・・」

俺は小さく頷いた。小さく頷いて、小さくお礼を呟いた。


再認識させられる。
ああ、本当に真が好きなんだなぁって。
でも、俺も真も男であって。それは一般的ではなくて。
でももしそれが許されることなら、俺は今すぐにでも窓を開けて
俺は真が好きだぁ、って叫んでやるのに。
それで真が応えてくれるのなら、街中でも叫べるのに。
・・・でも多分これは、報われない恋。
早く諦めなきゃ・・いけないのになぁ。

でも俺は、真に会う度に、真を好きになっていく。
それはどうにも、止まらなくて・・・・・


,,,,,next
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No.9 その微熱が冷めないのなら / 小説 / Comment*0 // PageTop▲

2009.03.04  <<23:14



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2009.03.02  <<20:08



人間は嫌い。だから、誰とも付き合わない。
人とか思想とかって分からない。
自分で傷付けておきながら、相手が離れると悲壮に浸ったりして
相手の所為だなんて散々喚いておきながら、謝られると自分が悪かったって泣き出したりして
好きとか愛してるとかもっと分からない。
何をもってそう言うのか、
心臓が高鳴るから?顔が熱くなるから?
分からない。
だから俺は、誰とも付き合わないし、誰も好きにならない。
例えば誰かに告白されても、それで何となく付き合って
やっぱ違う、って言われて告白されたのにふられて。
それを何度か繰り返して、何時の間にか年老いて、いつの間にか死んでいる。
そんな人生を送るんだと思う。
生き甲斐も何も見つけずに、そのまま死んでいくんだと思う。
・・だけどそいつは、突然俺の前に現れて。

「俺、和緒が好き」

俺のそんな人生計画やら思考やらを滅茶苦茶にしやがった。


その微熱に浮かされて


存在意義とか生き甲斐とか、恋人とか夢とか、誰もが求めているものを、望んだ事は一度もない。
何を思って生きているのか、自分でも不思議なくらい何も無くて
ただ淡々と過ぎていく毎日をただただぼーっと見つめるだけで、本当に何も無かった。
もちろんそれを誰かに話すなんて事は無いし、別にそれに悩んでいる訳じゃない。
何の意味もなく生きているから、ってそんだけの理由で死ぬほど俺は弱い人間でもないし
じゃあ何かを見つけよう、って歩き出す強い人間でもない。
何も分からんよ、というより何も分かりたくない。
何で生きてるの、何で何も望めないの、そんなの分かりたくもない。
ただ何となく、多分それが一番近い言葉。

だけどあいつは、一架は違った。
存在意義とか生き甲斐とか、恋人とか夢とか、別に対して望んでは居ないようだけど
でもちゃんと欲しいモノが見えていて、それに全速力で突っ走っていく
それがガラスケースの向こう側でも、それが出てくるまでガラスを叩き続ける。
そんな良く言えば、真っ直ぐで純粋。悪く言えば、自己中で向こう見ず。
俺が一番嫌いなタイプの人間だった。
だけど一架にとっては、俺はガラスケースの向こうの欲しいもので。
一架はずっと、俺の前にあるガラスを叩き続けている。
俺はその今にも一架に崩されてしまいそうなそのガラスを不安気に見つめる事しかできなくて
それに溜まらない嫌悪を感じる。
真っ直ぐ向けられた黒くて大きな瞳も、真っ直ぐと突き刺さってくるその言葉も
最初は絶対受け入れられなかったのに今はもう、油断したら受け入れてしまいそうで怖い。


「・・・で、なんでいるんだよ」

何時の間にか気付いたら、一架は俺の部屋に出入りするようになっていた。
どこから入っているのか知らないが、明らかに不法侵入な事には変わりない。
警察に突き出す事もしない俺もおかしいのだけれど。

「何でって、和緒に会いたいから」

何でそんな事も分かんないの?あたりまえだよ?、ヘタしたら女に間違えられそうなその綺麗な顔を
そんな色に染めて一架は答えた。
ストレートに、相変わらずストレートにそう答える。

「だからって勝手にはいんなよ・・・」

何ていつもいってるから、もう慣れてしまったけど。
最初の頃は本当に警察に突き出そうと思っていた。
でも何であの時突き出す事が出来なかったのか、俺は未だに分からない。

「・・和緒」

ああ嫌だ。嫌気が差す。
こいつが、和緒和緒、って俺の事を呼ぶ度に俺は応えてしまいそうになる。
だから必死で俺は口を押さえる。
この口が開いたら、俺は絶対なりたくない人間になってしまうって言い聞かせて。

「・・・何でそんな、怒った顔してるの?」

苛々する。
一架に、というより自分に苛立ってる。

「・・・・・・怒ってるから」

何で、こんななんだよ。
俺の中にずけずけ入って来て、俺は必死で壁を作って。
それでもこいつを傷付けられないし、拒めなくなってきてる。
こんな自己中で我が儘で、俺の一番嫌いなタイプ。
なのに、なのに何で。

「・・何で俺の顔、見てくれないの?」

ああ、もうだめだ、そう一瞬思った。
そしたら身体が勝手に動いて、俺はいつの間にやら隣に座っていた一架を
そのままベッドに押し倒していた。

「お前が嫌いだからだよ」

声が震えてる。
嫌ってしまえ、最低って怒鳴りつけてしまえ。
何で俺なんだよ、何でお前なんだよ。
何で、何でこんな・・・。

「・・・和緒?」

身じろぎもせずに、ただ、心配そうに俺の顔を見上げてくる。
真っ直ぐに、俺の顔を見つめてくる。
胸が痛い。何か細い紐で縛られてる見たいにキリキリ痛む。

「和緒・・何で、泣いてるの?」

一架の言葉でようやく気付いた。泣いてる、そうか俺は泣いているのか。
泣くのなんて何年ぶりだろう。最後に泣いたのいつだっけか。
何で、なんて俺が聞きたい。

「なか・・ないで?」

一架はその心配そうな瞳を俺に真っ直ぐと向けて、俺の頬に手をあてた。
そしてゆっくりと顔を近付けて、俺の唇を突然奪った。
それでも俺は動くことが出来なかった。
本当なら押し退けて、殴り飛ばして、部屋を飛び出すのに。
何も出来なかった。何も出来ずに、ただひたすら泣いた。


気付いたら朝になっていた。
目が覚めて一番に思ったのは、今日が日曜で良かった、ってどうでもいい事。
隣の一架はぎゅっと俺の手を握っていて、規則正しい寝息を立てていた。

「・・・睫毛長・・」

またどうでも良い事を呟いて、握られた手を少しだけ握りかえした。
そして小さく溜息を付いた。

こいつに、ガラスが壊されてしまった。
俺が出てくるのを待たずにこいつは、ガラスを叩き割って俺の中に飛び込んできた。
好きとか愛してるとか、感情とか思想とか、まだ分からない。
一架が何を持って俺を追いかけ回すのかとか
俺が何を持って一架を受け入れてしまったのかとか
全然分からんし、でもやっぱり分かりたくもない。
でも、

「和緒・・・すきぃ」

えへへへ、と眼を閉じたまま不気味な笑いを浮かべる一架が
溜まらなく綺麗な生き物に見える俺は
多分その熱に浮かされているんだろうと思うだけだった。


......end
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No.7 その微熱に浮かされて / 小説 / Comment*0 // PageTop▲

プロフィール

魔月 霰

Author:魔月 霰
ヲタクで腐女子、萌えない黒髪眼鏡。
真面目そうな顔してて頭の中は超腐ってます。
一応十代だが年より老けてると言われる。

ブログでは基本的にblの話ばっかりです。
軽く15禁です。苦手な方、御子様は観覧は御遠慮下さい

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