アトラクションデイズ

  なんでとか、そんなの関係無い。ただ君が、笑うだけだから。
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2009.04.23  <<19:30



「・・・。」

ナツを撫でながら、夏実は少々不安になった。
変なところに連れてかれたりしてたらどうしよう、と。
そう思うと同時に少しほっとした。
なんだ、まだそんな風に自分を思ってられるんだ。
ガチャ、急にドアが開いて夏実は勢いよくそちらの方を見た。
そこにはぼさぼさと寝癖で髪が凄いことになっている陽太が立っていた。
夏実はほっとして、握りしめてしまったナツを抱えていた腕の力を緩くした。

「なぁんだ・・陽太だったんだ・・」

心底安堵したような顔を陽太に向けて、夏実は微笑んだ。
おはよう陽太、と今が朝か昼かも分からないまま挨拶をする。
陽太も同じように微笑んで、挨拶を返してきた。

「・・って事はここは、陽太の家?」

夏実は寝かされていたベッドから立ち上がって、抱えていたナツを陽太に返した。
陽太はナツを受け取って、ごろごろと喉を鳴らす猫を撫でながら

「ああ・・ごめん、勝手に連れてきちゃって・・」

何か誘拐みたいだよな・・・?、と少々不安そうに呟いた。
夏実は、誘拐されてたらどうしようなんて思ってたのに、と自分の考えの矛盾さに
苦笑のような、嘲笑いのような笑みを浮かべて首を緩く傾けた。

「ううん。ありがと。なんか陽太になら誘拐されてもいいかなって」

え、と陽太が固まったのを余所に夏実はナツを陽太から取り上げた。
陽太はしばらく固まったまま
かあぁあ、と赤くなる頬と高鳴り出す心臓を何とか押さえようと一人で戦っていた。


「ごちそうさまでしたー」

両手を合わせて夏実は満足気に呟いた。
そして目の前のお皿を重ね始める。
陽太はそんな夏実をテーブルに片手をついた状態のまま眺めていた。

「あーおいしかった。陽太、料理上手だね」

心底幸福そうな微笑みを陽太に向ける夏実に対して、こんな顔もするんだな、と
ぼんやり考えながら

「鍵っ子だからね」

そう呟いて椅子から立ち上がった。
そして夏実の前に置いてある重ねた皿を持ち上げて、カウンターの裏に回ってシンクに皿を置いた。
皿を洗い始めるカウンターの向こう側の陽太を眺めながら
夏実はいつの間にか膝に乗っていたナツを撫で付け始めた。

「ごめんね・・ご飯まで食べさせて貰っちゃって」

どこか申し訳なさそうな色が見える夏実の言葉に、陽太は微笑んだ。
別に?、と。
夏実は心地よさ気に目を細めるナツを見下ろす。
何となく、陽太と目があったら恐いな、と思ったのだ。
それは別に陽太が恐いのではなく、どちらかというと自分の方が恐いのだ。

「・・・陽太は・・優しいね」

ぽつり、と呟いた言葉。それは自分の言葉なのに酷く胸が締め付けられた。
きりきり、というよりぎりぎり痛む。何でこんな事になるのか、大体分かる。
夏実は椅子から立ち上がった。

「ありがとう・・俺、帰るね」

陽太の表情も、ナツのどこか寂しげな鳴き声も気にも止められなかった。
それだけ言って陽太が、待って、という前に夏実は陽太の家を飛び出したのだった。

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No.18 猫より純情、空より過剰 5 / 連載 / Comment*0 // PageTop▲

2009.04.18  <<12:39



世間様とやらに嫌われようが好かれようが、この細い肩の震えが止まるわけでもなく
今にもその綺麗な容姿をぐちゃぐちゃに踏みつぶしてやろうか、と誰かが話しかける。
別にそれが怖いわけではないのに、なぜか逆らえなくて
足の裏から感じる大地の暖かさとやらに、ただひたすら安堵を求めて
それでまた、ふらふらと夜をさまよったりする。


「別にいいってば。靴履けば良いことだし」

陽太の背中におぶられながら、夏実は小さく呟いた。
確かに、と自分でも思うのだが何だかこうしたいような気持ちがあって。

「・・嫌?」

・・嫌だろうな、と思いながら陽太は歩いた。
夏実は背中でしばらく黙った後、陽太の背中に頬をくっつけた。

「嫌じゃないけど」

ぽつり、と夏実が零す。
嫌じゃないんだ、と少し、嬉しさを感じた。それが何なのか、まだ分からないのだけれど。
もしこの夏実という人間が裸足で道を歩かなければ、フェンスに怪我して登らなければ
消えてしまうというのなら、そしてそれを見てられないというのなら。
何でもしてあげたいと思ってしまった。
フェンスに登る代わりに一緒に笑って、裸足で歩く代わりに運んで。
それで何かが変わるなら、変えてあげたい、と強くそう思った。

「・・で、お前、家どこ?」

陽太はふ、と立ち止まって背中の夏実に聞いた。
しかしどれだけ待っても返事は帰ってこない。
陽太は不思議に思って、首を後ろに向ける・・が、夏実の顔は見えない。

「おーい、聞いてる?」

ちょっと大きめの声で言ってみるが、やっぱり返事は帰ってこなかった。
もしかして寝てる?、と呟いた後、苦笑混じりな笑みを零して陽太はまた歩き出した。
足下でナツが、にゃあ、と鳴いた。


久しぶりに、夢のない夢を見た。
ただ、真っ黒な空間を泳いでいる、そんな夢。
それはいつもよりずっと安心できて、幸せな心地な、眠りの世界。
いつかまた、こんな至福な眠りに慣れてしまったら
それは凄く望ましい未来だけれど、きっとその後が怖い。
目を覚ましたときのあの、汚染感もまた、

「・・・・?」

夏実はうっすらと目を開けて、見覚えのない天井をぼうっと見上げた。
しばらくそれを見上げた後、不思議に思いながらも上半身を起こす。

「何・・してたんだっけ?」

知らない部屋。知らないベッド。
小首を傾げて昨夜の事を考える。陽太と会って、陽太に運ばれて・・えっと?
にゃあ、そんな声と共に手首にふわふわの感触が当たって夏実はそちらを見る。

「ナツ!」

ナツがこちらを撫でて欲しそうに見上げていた。
夏実はナツを呼んで、にゃあ、と返事を返すナツを抱き上げた。

←and more
No.17 猫より純情、空より過剰 4 / 連載 / Comment*0 // PageTop▲

2009.04.08  <<13:19



次の日の、同じぐらいの時間帯。
夏実と会ったあの場所に、猫のナツをつれて陽太は行ってみた。
どうしてこんなところへまた来てしまっているのか、
自分でもばかげていると思うのに、足が勝手に走り出す。
当たり前の事だが、あの場所に夏実の姿はなかった。
夏実のいない廃墟の屋上は、美しさをなくしてただ悲しく虚しくそこに有るだけだった。
陽太はしばらくその場に立ち尽くしてナツの、にゃあ、という声で我に返った。

「だよな、いるわけねえよな」

ははは、と力なく一人で笑って陽太は、屋上のフェンスに近づいた。
ふ、と下を見ると夏実の血であろうか、赤い液が僅かにシミのようになって残っていた。
陽太はフェンスに片手の指を絡めてその向こう側の景色を見た。
昨日、夏実が見ていた景色。それは灰色の町が真っ暗な闇に飲み込まれていく、そんな光景。
陽太はそれに対して少し恐怖を感じた。
自分らが普段暮らしているこの町は、こんなにも恐ろしく見えるのかと。
夏実には、夏実のあの瞳にも同じような景色が移っているのだろうか。

「・・・陽太・・?」


不意に声が聞こえて、陽太は振り返った。
そこには不思議そうな顔でこちらを見ている夏実がナツを抱えて立っていた。

「あ」

陽太は驚きのあまりそれだけを零して、後はただ突っ立っていた。
何か夏実が昨日よりも綺麗に見える、と思ってしまう。
月明かりに照らされた白い肌とか、長い睫毛とか細い肩とか、澄んだ瞳とか。

「・・・・・どうしたの?」

突っ立ったままの陽太に夏実はまた不思議そうな顔をして小首を傾げた。
陽太は、あ・・ああ、と声を零しながらも、何で動揺するんだよ、と自分を罵った。

「陽太も何か忘れ物?」

夏実の問に陽太は、え?、と言った。
また夏実に会えると思って、とか口が裂けて死んでもいえない。
夏実はナツをおろすと、フェンスの方に近付いて何かを拾った。

「俺は・・コレ」

夏実は白い運動靴を陽太に見せて、昨日脱いだままだったから、と呟いた。
そしてそれを裸足の足にそのまま履いて、またナツを抱き上げた。

「・・って事は、ここまで裸足で来た訳?」

陽太の言葉に夏実は、そうだけど、何でそんな当たり前の事聞くの、と言った具合に夏実は答えた。
それって痛いんじゃない、と聞いたら、別に、と帰ってきた。
昨日も怪我してても他人事のようだったし、こうしてみると夏実は地に足がついてないみたいに
ふわふわした存在のように感じれた。
今にもどこかに飛んでいったり、すう・・って消えてしまいそうな気がする。

「裸足で歩いてないと、わからなくなるんだ」

夏実はフェンスに近付き、また昨日のようにそこに座った。
ごろごろと喉を鳴らすナツを撫で付けながらどこか遠くを見るような目で自分の足を見つめた。

「自分がちゃんと生きてるか分からなくなる・・・って別に生きてなくてもいいんだけど
・・でも突然、怖くなる。どこかに連れて行かれてしまいそうな気がする」

だから今にも消えてしまいそうだ、と感じてしまうのだろうかと陽太は思った。
死んでいるのか生きているのか、分からなくなる。
そんな事考えたことも感じたこともなかった。突然夏実が違う世界の人のように感じてしまった。

「だから靴もいらないんだけどね」

夏実は履いた靴をまた脱いで、傍らにきちんとそろえて置いた。
フェンスにもたれてナツを撫でながら夏実は陽太を見上げた。

「ほんとは、ナツと陽太に会えるかなって思って来てみた」

ふ、と不意に薄い微笑を浮かべて夏実が呟いた。
陽太はまた突っ立ったまま、自分が死んでもいえないと思ったことを平気で言ってのけた
夏実をただ凝視した。
何でこんな風に胸が締め付けられるのか、分からない。
陽太は戸惑っていた。止めどなく流れてくる訳の分からない感情と目の前の人物とに。

「・・・・寒い」

陽太から目線を外して夏実が消え入りそうな声で呟いた。
裸足のまま転がっている夏実の足が、恐ろしいくらいに白く見えた。

「・・何で、そんな」

口が勝手に動いた。夏実がこちらを見てくる。
自分でも何を言おうとしているのか分からない、のに言葉が出てきてしまった。

「・・・・・・何でそんな泣きそうなの?」

陽太が言う前に、夏実が聞いてきた。
陽太はただ目を丸くして、え、と声を零した。
夏実が立ち上がって、陽太に近付く。

「俺の所為?」

不安そうに夏実が呟いた。
その悲しげな表情に、陽太は本当に泣いてしまいそうになった。

「ごめん・・ね?」

戸惑いながらも謝ってくる夏実に、一瞬だけ変な感情を抱いた。
その瞬間、気付いたら夏実を抱きしめていた。
それがなぜか自分でも分からない。分からないのに、離せずにいた。

「謝んなよ・・お前の所為じゃねぇよ」

自分の声が酷く情けなく感じた。
陽太の腕の中で驚きながらもおとなしくしている夏実、じゃなくて、多分自分の所為だ。
にゃあと二人の間で苦しそうに鳴くナツ。
ただ、弱くてごめんな、と意味もなく呟いて、陽太は夏実をぎゅっと抱きしめたのだった。
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No.16 猫より純情、空より過剰 3 / 連載 / Comment*0 // PageTop▲

プロフィール

魔月 霰

Author:魔月 霰
ヲタクで腐女子、萌えない黒髪眼鏡。
真面目そうな顔してて頭の中は超腐ってます。
一応十代だが年より老けてると言われる。

ブログでは基本的にblの話ばっかりです。
軽く15禁です。苦手な方、御子様は観覧は御遠慮下さい

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