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アトラクションデイズ

  なんでとか、そんなの関係無い。ただ君が、笑うだけだから。
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2010.02.18  <<16:54



消えていく意識と視界の中で最後に見たのは
あの日だまりだった。


盲目ストロベリー


真っ暗な世界で唯一光る
その場所が俺の全てだった。


「奏歌さん…朝ですよ?」

日向はカーテンを開けながら、ベッドの中で寝息を立てている奏歌を呼んだ。
奏歌は小さく寝返りを打ってまた寝息を立てはじめた。

「……奏歌さん?」

日向はベッドに近づいて手探りで奏歌を捜す。
手に服の感触があたるとそれを掴んで揺すった。

「ん……ん?」

暫く揺すられて奏歌は薄く瞳を開く。
小さな声を聞くと日向は服から手を離した。

「起き…ました?」

日向の問いとほぼ同時くらいに奏歌はベッドから上半身だけを起こした。

「…ああ…おはよ…」

そんな奏歌の声を聞いて日向はほっとしたような笑みを浮かべた。

「おはようございます」


だからそんなのを壊したくなかったんだ。


「えと…奏歌さん…?」

日向は奏歌にお姫様抱っこのようにして運ばれながら呟いた。
しかし奏歌は離そうとしない。

「また色々と壊されても困るからな」

奏歌の言葉を聞いて日向は少し大人しくなる。

「…ごめんなさい…」

日向はしゅんとなり小さく弱々しい声で謝った。
そんな日向に対して奏歌は日向を椅子に下ろして頭をぐしゃぐしゃと撫でた。

「…嘘。俺がしたいだけだから…迷惑?」

ふ、と笑みを浮かべながら奏歌が言った。
日向は俯きがちに下を向く。

「迷惑…なんかじゃ…」

ならよかった、と奏歌は笑った。
日向はその明るい声を聞いて軽い罪悪感に見舞われる。
また気を使わせてしまった、と。
たまに自分のこの目が見えないせいで、と時々自己嫌悪に浸る。
奏歌の優しさを感じる度に嬉しさと同時に果てしない不安を感じる。
相手が今、どんな風に自分を見ているのだろうか、とか…。

二年前、日向はこの大きな家にやって来た。
真っ白な壁で青い屋根の綺麗なお家。
その瞳はそれを見ることは無いのだけれど。
事故で視力も両親も無くしてしまった日向を引き取ったのが
その大きな家に住む遠い親戚である奏歌だった。

日向は奏歌の家の家政婦という事になっているが盲目の日向は結局対した事は出来ず…。
だから無力な自分への苛立ちとそれでも優しくしてくれる奏歌への甘えとか罪悪感とかが段々日向を蝕んでいく。
もしこの目が見えたらとか…やっぱりそんな事ばかり考えてる。

「じゃ、行って来るから」

朝ご飯を食べ終わった後奏歌は静かに席を立って呟いた。
日向はその声を聞いて椅子から立ち上がった。

「あ…はい、行ってらっしゃい」

いつもより幾分か元気がない声が零れて、日向は慌てて笑みを浮かべた。

「お仕事頑張って下さい」

ばれませんように、と願いながら見えない背中を見送った。

ぱた、とドアが閉まった直後の静けさが嫌い。
どうしてこうも奏歌がいないだけで部屋が広く、淋しく感じてしまうのか解らない。
何も見えないというのに。
日向は小さく息を吐いて食器を手にとりカウンターの裏に回った。

綺麗な絵を描いている。
奏歌の仕事の内容はそれだけしか日向は知らない。
家の横に小さなアトリエがあって、奏歌は普段そこで絵を描いている。
行こうと思えば、会おうと思えばいつだって行けるのに、とてつもない不安に襲われる。
どうしてこんな心地になるのか解らなくていたたまれないから日向は毎日掃除をして過ごしていた。
簡単な掃除くらいしか盲目の日向には出来ないから。
だから家はいつもピカピカだけれどそれを見る事も無くて、自分では役立たずだと思っていて。
それでも奏歌は充分過ぎるくらいだ、って言ってくれるけど。

「日向あぁああっ!」

急に部屋のドアが凄い勢いで開いて日向はびく、と肩をすくませた。

「えー…と、藍兎くん?」

小さく首を傾げ日向は呟いた。
藍兎と呼ばれた少年は日向の前の席に許可なく座って

「日向ぁ…聞いてくれよ」

と勝手に話始めた。
彼、潤戸藍兎は奏歌いわく「変なガキ」だ。
歳は恐らく高校生くらいだと思われ、黒髪短髪で愛想のいい好少年だが平日の昼間からふらふらしていて
何処に住んでいるのか何をしているのかも全く謎な少年だ。
ある日突然家に乗り込んできて、俺を弟子にしてくれ!、と奏歌に志願してきた。
奏歌は、弟子はとらん、と断ったのだが週に二、三日ここに通うようになってしまった。
そんな謎少年だが日向は数少ない友達が出来て少し嬉しかった。
だから奏歌に、少しくらいは相手にしてあげたらどうですか、何て死ぬ思いで頼んで見たりもした。
そのお陰かどうかは解らないがどうやら最近は少し絵を描かせてくれるらしい。

「…だから俺さぁ、絶っっっ対双木さん家乗り込んでやろーって思って!」

藍兎が叫んだ。双木、というのは双木二葉の事だ。美容師をしている奏歌の友達だ。
奏歌のアトリエに押しかけた時に逢ってどうやら一目惚れしてしまったらしい。
男同士でも別に気にしねぇ!、らしい。
そんな風に多少強引だが、自分の意見を貫ける藍兎を日向は羨ましいと思っていた。

「…本当に藍兎くんは双木さんが好きなんだね」

日向がぽつりと呟いた言葉に藍兎はかあぁあと頬を染める。

「まッ、ま、まあねっ」

先程より少しばかり声が高くなった藍兎に日向は微笑んだ。

「そっかぁ…」

素直に誰かを愛してそれを素直に伝えられる藍兎を可愛いと思うと同時にすこし妬ましかった。
良く解らない感情に翻弄されている自分にはまだほど遠いから。

「日向は?」

突然、藍兎が呟いた。
日向は、え、と予想しなかった問いに声を零した。

「日向は好きな人とかいないの?やっぱ奏歌とか?」

考えてる、多分。
奏歌に対しての感情。

「……いないよ?」

日向は静かに呟いた。
もし、いたとしてもこんな感情は抱いてはいけない。


「ただいま」

暗い部屋に奏歌の声が響く。
いつもなら日向の、お帰りなさい、があるはずなのに今日は聞こえて来ない。

「日向?」

奏歌は電気のスイッチを押して中に入る。
部屋が明るくなりソファの上に眠っている日向を発見する。
奏歌は小さく笑みを零して日向の寝ているソファに座った。

「風邪引くぞ?」

だけれど小さな声で呟いた。そして日向の細い髪を撫でた。
日向は長い睫毛を揺らしながらも規則正しい寝息を立てている。

「日向…」

奏歌は日向の頬に指を沿わせてどうしようもなく泣きそうな感情に襲われた。

「……好きだ」

気持ちが膨らんで思わず喉から溢れてしまった。
言った後に本当に泣きそうになった。

「……そんな事…」

不意に日向の形のいい唇が動いてそんな声が零れた。

「日向…っ?」

奏歌は驚き目を丸くする。まさか、起きていたなんて。

「俺っ…良く解らないんです…」

日向は上半身を起こして呟いた。
心なしか肩が震えている。

「俺はっ…、ぁ」

言いかけて、日向の瞳からぼたぼたと涙が零れ始めた。奏歌も日向自身も驚いたように目を丸くした。

「ひな…」

奏歌は日向に触れようとしたか、が日向はその手を払い退けてソファから立ち上がった。

「ごめ…なさ……」

日向は小さく呟いていたたまれなくなったように唇を噛み締めて走り出した。
奏歌は後を追いかけようとして立ち上がったが、日向、と呼んだだけで追いかける事が出来なかった。
奏歌はソファに崩れるように座り込み、片手で額を押さえた。


「はっ…は…」

家を飛び出してただやみくもに走っていた日向は息が出来なくなってようやく立ち止まった。
ああ、ここはどこだろう。
何も見えない、何も分からない。

「…ッ…ぅ」

日向はその場に座り込んで小さく声をあげながら泣き始めた。
どうしてこんなに胸が締め付けられるのか解らない、どうして奏歌の事を考えるとこんなに泣き出しそうになるのか解らない。

「…ひーちゃん…?」

急に声が聞こえて日向はびく、と肩を強張らせた。

「やっぱひーちゃんや」

靴の音が近くで止まって日向は恐る恐る顔をあげた。
そこにいたのは不思議そうな顔をした双木二葉だった。
もちろん見えた訳ではない。日向はその声と喋り方で二葉だと悟った。

「なみ…きさ…」

日向は涙でぐしゃぐしゃになった顔を双木に向けた。
二葉は日向の顔を見て目を丸くした後、日向の前にしゃがみこんで日向の頭を撫でた。

「あぁあ、可愛い顔が台なしやな」

二葉はいつものような優しい声色で呟いた。そして日向の腕を掴んで立ち上がった。
日向は驚きつつも立ち上がる。

「寒いやろ」

日向が、え、という前に二葉は日向をぐい、と引っ張って歩き出した。
日向はどうしようかと思いつついくあても特になかったので二葉についていく事にした。


「入り」
暫く歩いた後、階段を登って二葉が呟いた。
日向は小さく頷いて二葉に連れられるまま恐らく二葉の家らしき所に入った。

「ここ座っててな。」

二葉にそう言われて日向はソファに座らされた。
日向はがちゃがちゃという物音を聞きながら先程の奏歌の告白を思い出した。
好きだ、という意味。急に頬がかぁぁ、と染まった。

「珈琲やけど大丈夫?」

二葉から珈琲の入ったカップを受け取り、日向は小さく頭を下げた。

「はい…ありがとうございます」

日向は珈琲を口に流しながらその暖かさになんだか泣きそうになった。

「奏には連絡しとくから」

二葉の言葉に日向はまたお礼を呟いた。
迷惑をかけたくないのに迷惑をかけまくっている、というジレンマ。
でも、奏歌に言った事は本当の事だ。好きとか嫌いとか、解らない。
一つだけ解るのは、自分が無力で奏歌に迷惑をかけているという事だけ。

「ひーちゃんは、ひーちゃんが思うとるよりええ子やん?」

とさ、と日向の横に座りつつ二葉が呟いた。
日向は、え、と声を零す。

「…やし、皆ひーちゃんの事大事にしてんで?」

な?、と二葉が呟いた。
その瞬間に引っ込んでいたはずの涙がまた溢れ出て来た。
よしよし、と二葉が頭を撫でてくる。
日向はまた甘えていると思いながらも、二葉に頭を撫でられた。


ひーちゃんはもっと甘えてええんやで、そんな言葉はとても優しくて。
だけれど自分にその資格は無いと思われて。
まだぐるぐると葛藤してそれは迷宮入りしてしまいそうな勢いだった。


暫く泣いた後、日向は泣き腫らした目を二葉に向けた。

「あの…双木さん…」

日向の掠れた声に二葉は、ん?、と返事を返した。

「俺…帰ります」

日向のその言葉に驚いたように目を見開いた二葉だったがすぐに微笑んで

「そっか」

と返事を返した。


ふらふらと歩いていた俺を拾ってくれたのは
紛れもなく、俺の光だった。
そしてそれは俺の一番だった。


「日向…!」

ドアの向こうで奏歌が心底ホッとしたように呟いた。
日向はしゅんと俯いたまま、ごめんなさい、と子供のように謝った。

「じゃ、俺行くわ」

送って来た二葉が呟き、ありがとう、を二人から言われた。

「また遊びに来ぃや?」

な、と笑って二葉は帰って行ってしまった。
日向は心の中でお礼を呟いたのだった。


「ごめんなさい…」

リビングのドアが閉まった瞬間日向は俯きがちに謝った。
かたかたと心なしか肩が震えている。

「…俺こそごめんな」

いつものような優しい声色、でもどこか哀しい響きだった。

「あんな事してびっくりするよな…」

奏歌の言葉に、そうじゃない、といえなかった自分を呪いながら日向は顔をあげた。

「でも本当に日向が…」

言いかけて、奏歌は日向を愛しげに見つめて目を閉じた。

「ごめん、こんな奴と一緒に住めないよな」

呟かれた奏歌の悲しい響きに日向は

「何…言って…」

と呆然と呟いた。
まさかそんな事を言われる何て思ってなくて、身体からさあっと血の気が引くのを感じた。

「だって…気持ち悪いだろ?」

自嘲気味な声が日向の耳に届く。
日向は服の端をぎゅっと握りしめた。
ついでに唇み噛み締める。
日向は何も言えなかった。


もしかしたら俺はもう要らないのかな、ううん最初から邪魔だったんだ、ああ、今気付いた。


俺はこの人が、好きなんだ。



「日向…?」

頭の中で流れる言葉に日向は絶望していた。
ついにはもう死んでしまおうかとも考えてしまっている。

「日向…っ!」

急に肩を掴まれて日向ははっとなり顔をあげる。
そこで日向はようやく自分が泣いてる事に気付いて慌てて頬の涙を拭った。

「ごめんなさッ…」

謝って涙を拭ってもまた溢れてくる。
胸が張り裂けそうに痛くて、何も見えなくて、この思いも空回りして、日向はとうとう顔を覆って泣きはじめた。

「ごめんなさい…ごめんなさ…っ」

謝る事しか出来なくてまた出ていってしまおうかと思った瞬間、不意にふわりと何か暖かいものに包まれた。
それが奏歌だとすぐに解った。

「泣く…なよ…」

奏歌の切なげな言葉に日向は何とか泣き止もうとするが、そうする度に余計に涙が出てくる。

「はい…はいっ」

いいながら涙を拭う。
心を落ち着かせて日向は奏歌を見上げた。

「俺…は……臆病でいつも人の顔色ばかり伺ってて…奏歌さんにとって俺って何なんだろう、とか迷惑かけてないだろうか、とか
そんな事ばかり考えてて…ついには奏歌さんや双木さんの優しさまで疑い出しそうで…自分が嫌になってきてて」


どんなに明るい所にいても視界は真っ暗なままで
聞こえる声も何処から言われているのか解らなくて、だけど奏歌のこの腕の中だけは暖かくて、ちゃんとここにいる、って解る。

「奏歌さんの言葉はいつも優しくて、暖かくて嬉しいんです…あの時も本当は嬉しかった。」

どうしたら、とかなんで、とかそればかりが先立って嬉しさが飛んでしまった。

「でも…俺なんかっ…て」

多分、ううん絶対釣り合わないと思った。
そしたら急に恥ずかしくなって、自分は何て愚かで無力な人間なんだろうと思ったら涙が零れてきて思わず走り出してしまっていた。

「…日向はそのままでいいよ?」

奏歌の言葉に、え、と声を零す。
自分は、変わらなきゃ変わらなきゃと思っていたのにまさかそんな事を言われるとは思わなかったから。

「俺はそのままの日向が好きだよ…」

そうだ、いつも取り残されているのは自分だけなんだ。
こんなに、自分を評価してくれる人がいるのに。

「気付かなかった?」

日向は奏歌を見上げた。
何も写らないのに、光を見た気がした。

「今…気付きました」


酷いジレンマの嵐が
いつまでもいつまでも胸に吹き荒れていて
もう一生この空は晴れないんだって思っていた。
だけれど案外直ぐ近くに晴天は見えていて。
そんな盲目さにまだまだ翻弄されそうだけれど…。

End
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プロフィール

魔月 霰

Author:魔月 霰
ヲタクで腐女子、萌えない黒髪眼鏡。
真面目そうな顔してて頭の中は超腐ってます。
一応十代だが年より老けてると言われる。

ブログでは基本的にblの話ばっかりです。
軽く15禁です。苦手な方、御子様は観覧は御遠慮下さい

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