アトラクションデイズ

  なんでとか、そんなの関係無い。ただ君が、笑うだけだから。
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2009.03.21  <<00:27




「名前呼ばれたから、びっくりした。」

がしゃがしゃとフェンスをつたって降りてきてまた冷たいコンクリートの上に足を付けた。
夏実はフェンスを背に蹲るように座って、猫を抱いている青年、山陽太を見上げてそう呟いた。

「俺、夏実、って名前だから・・ナツって呼ばれてて」

小さく呟く、と陽太は、へえ、と声を零した。
そして夏実と目を合わせるように床に座り込んだ。

「女の子・・みたいでしょ」

夏実は立てた膝に頬を寄せながら、ふ、と儚げに微笑んでそう呟いた。

「・・・うん」

陽太は小さく頷いて、数秒後小さく笑った。

「でも似合ってる。」

陽太の言葉に、夏実は少し驚いたように目を見開いた後またすぐに元のような真顔になって
足元にじゃれついてくる猫のナツへと目を落とした。

「この猫の友達?」

夏実はごろごろと気持ちよさげに眼を細めるナツの顎を撫でながらそう呟いた。
陽太は夏実の、友達、という言い方が何だかおかしくて笑みを零した。

「うん、まあ友達・・かな。俺がこいつを拾って・・それで何か懐いちゃって。
ナツに拾ったからナツ、なんて安易でしょ」

夏実は陽太の話に耳を傾けながら、ナツを抱きかかえて胸の中で撫でつけた。
ナツはうとうとと眠りの世界に落ちていきそうに眠そうな表情で小さく鳴いた。

「そう・・俺もだよ、夏に産まれたから夏実・・って。
・・案外そんな安易なものだよね・・名前なんて」

眼を細めながら何処か淋しげな表情の夏実は、ふ、とナツから目を離して、何処か遠くを見つめた。
陽太は何だか不意に泣きそうになってしまった。
夏実が何を言わんとしているのかも、分からないというのに。

「あ、でも」

何かを思いだしたかのように声を上げて、夏実は陽太の顔をジッと見て来た。
陽太はその夏実の白くて、意外と可愛い顔にどきっとしてしまった。

「太陽が、ひっくり返って陽太。・・・陽太は、良い名前だね」

小さく、どこか儚い声で呟いて、夏実は微笑んだ。
陽太はその瞬間、何かを喉に詰められたかのような感覚に陥った。
声も息も出来ない、そんな状態。
今宵初めて偶然会っただけの仲なのに、どうしてこんな事になるのか、陽太はまだ分からなかった。

「ナツ・・寝ちゃった」

夏実の腕の中で、抱かれるようにして眠りについている猫を見つめながら夏実は呟いた。
陽太はそう言われて、はっ、となりナツを見つめる。
ナツは目を閉じて心地よさそうな顔で規則正しい寝息を立てながら眠っていた。
その愛らしい姿に、思わず陽太も顔が綻んでしまった。
しかし次の瞬間、そんな表情もどこかに消え去ってしまう。
それはというと、夏実の足から零れる一筋の赤い液を見つけてしまったからだった。

「なあ・・血、出てるけど」

陽太は急にそれを見つけてしまって、心臓が止まりそうなほどの驚きを感じてしまった。
震える声で指摘すると夏実は、ああこれ、と何でも無いようにそう言った。

「・・さっきフェンスに引っ掛けちゃって怪我したのかもね」

まるで他人事のように夏実は呟いた。
白い肌にその赤が栄えていて、余計に痛々しく見せていた。
陽太は来ていた服のポケットに手を突っ込んだ・・しかし、中には何も入っておらず
ハンカチくらい持っとけよ、と頭の中で自分を叱りつけた。
それを見て夏実は緩く首を傾けて

「大丈夫だよ、これくらい・・別に痛くもないし」

そう呟いたのだった。
陽太はそんな他人事のようにしている夏実に酷く腹が立ってきてしまった。
それが何故なのかは分からないが、赤い液体が目に入る度に
頭に血が上るのを感じる。

「そんな事いうなよ。」

急に声のトーンを落として、陽太は呟いた。
夏実は相変わらず、なんで?、といったように陽太を見上げてくる。

「お前自分の身体何だから大事にしろよ・・折角綺麗なのに」

自分の事傷付けるなんて考えるだけで虫酸が走る。
この世の中には、死にたくなくても死んでいく人の方が多いというのに。
そんな事を頭の中で巡らせながら呟いたら、夏実が、え、という顔をした。
目を大きく見開いて驚きの色を浮かべながら。
それを見て陽太も、え、となった。そして急に恥ずかしくなってくる。
大事にしろよ・・折角綺麗なのに、綺麗なのに、綺麗なのに・・。
その言葉が頭の中でエコーが掛かって流れていく。

「あ、や、別にそういう意味じゃなくって!」

陽太は慌てて訂正しながら叫んだ。
そんな事男に言う台詞じゃないよな、と今度は自分に腹が立ってくる。
あたふたとパニック状態に陥っている陽太を他所に夏実はかしゃんと音を立ててフェンスに寄り掛かった。

「・・・ありがと」

思いもよらない事を夏実が呟いた。
陽太はまた、え、となった。何がどうなってその言葉が出てくるのか、分からなかったからだ。

「でも俺・・綺麗何かじゃない」

夏実はまた、陽太が泣きたくなるような淋しい表情を浮かべた。
案の定陽太は、泣きたくなってしまった。

「綺麗なんかじゃないよ・・」

夏実が繰り返す言葉。それをことごとく否定したくなった。
だけれど陽太は、初めて抱く意味の分からない感情とただ戦うしかなかった。
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No.14 猫より純情、空より過剰 2 / 連載 / Comment*0 // PageTop▲

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魔月 霰

Author:魔月 霰
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真面目そうな顔してて頭の中は超腐ってます。
一応十代だが年より老けてると言われる。

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