アトラクションデイズ

  なんでとか、そんなの関係無い。ただ君が、笑うだけだから。
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2009.02.26  <<21:01



暑いのか、寒いのか 良く分からなくなってきた。
ただ一つだけ言えるのは、喉が乾いているという事。
何だかもう倒れそうだ・・倒れそ・・・あ、倒れちゃった。
この固いコンクリートも、氷ってしまいそうに冷たいような気もするし焼けてしまいそうに熱い気もする。
死にかけって、こういう事を言うんだろうか。
夜の真っ暗な空がだんだん狭くなってくる。
そういえば、星って全然見えないんだな。
星が見えないのは、町の灯りが眩しいせいだってどこかで聞いた事がある。
でも何でだろう 全然明るくないんだね、僕の周りは。
こんな真っ暗な所で死んじゃうんだろうな、本当に。

ああ・・やっぱり寒いや


「おいあんた」


でも、眼を閉じようとした瞬間、不意に声が降ってきた。
それは明るい、光だった。


吸血鬼は苺を食べる。


夏は苦手。熱くて溶けそうだから。
いや、ていうか溶けるから。
だけどもカーテン越しの太陽は、キラキラ光っててそれはそれは綺麗で。
その向こう側で楽しそうに笑ってる君はもっともっと綺麗で。
ふっ、と振り返って手を振って笑う、本当はそんな君の隣を歩きたかった。
それはそれは、溜まらなく、歩いていたかった。
だけど僕はその叶わない願いを抱きながら、そっとカーテンから離れる。

「いってらっしゃい、音音」

小さな声で呟いて、小さく小さく笑うしかない。
だけれどこれも幸せ、と呼べるくらいの感情で、この距離だって愛おしくて
僕は眼を細めて、また暗い部屋で朝昼を過ごす。
その酷い眠気に襲われて。


あの日、死にかけていた僕を拾ってくれたのは
偶然通りかかった音音だった。
音音が声を掛けてくれなかったら、恐らく僕は今頃死んでいただろう。
その酷い喉の渇きに飢え苦しみながら。

こうなってしまったのは、音音に会う3日ほど前の事。
僕は所謂、吸血鬼、と呼ばれるこの世界では伝説上の生き物で
もちろんこの人間の世界とはまた別の世界で生きていた。
だけどある日僕は、その世界での禁忌を犯してしまった。
・・それは、同じ種属・・そうつまり吸血鬼の血を吸ってしまうこと。僕はそれをしてしまった。
正しくは、吸わされた、といった方がいいかもしれない。
まあともかくその所為で、僕はこの人間界に堕とされてしまった。
この世界は美しい世界だった・・けど、元の世界で食べていたような生き物は見当たらない。
昼間は暑くて溶けてしまいそうだし、花は一本も見つからなかった。
太陽の光やら人混みの雑音やらで体力が底を尽きた僕はあの日倒れてしまったという訳だ。

音音は、そんな僕をこの家に運んできてくれて
最初は僕も自分がそんな生き物であるという事を言いたくはなかったのだが
質問攻めにあって、つい話してしまうと
どこからともなく薔薇の花やらを大量に持ってきてくれたりして
そして今も、僕をこの部屋に置いてくれていて。

僕は日の光の下には出られないし、夜行性だし
やっぱり薔薇の花だけじゃそんなに体力も持たないから
ただ音音の為に掃除やら料理やらをする事しかできなくて、
・・それでもいていいって言ってくれるから、きっと僕は自惚れているんだろうけど・・。

でもこの暖かい場所は大好きで・・
・・・音音がいないこの部屋は、少し寒いような気もするけど。


「・・・わ、もうこんな時間・・音音帰って来ちゃうね・・」

ソファにもたれて寝ていた真冬は、目を擦りながら起き上がる。
昼間は、酷い眠気に襲われてついつい寝てしまう。
本当は音音と同じ時間に、同じだけ寝てみたいのに。
ああ、でもやっぱり本当は、音音と同じ空の下を歩きたい。
あの明るい太陽を音音のように、気持ちが良い、って微笑んで浴びてみたい。
だけどそれは叶わない、願い。

「今日は何作ろうかなー」

真冬は呟きながらテーブルの上の、料理の本を開く。
これは何故か音音の家に大量に置いてあった料理本の中の一冊だ。
ここに来てから随分と料理にも詳しくなったし、最初の頃に比べて上手に出来るようになった。
後それから、この世界の字もようやく大体は読めるようになった。
漢字はまだ簡単なのしか読めないが。

「わ・・これ、何だろう?はる、の、いち、ご、の、しょー・・と・・けー・・き?」

料理の本の中の一ページ、そこには真っ白な三角の形の何かの上に、
キラキラ光る赤い苺が載っている、料理の写真が載っていた。
それは今までに見たことのない料理で、とても綺麗だった。

「わー・・・美味しそう」

ぽつりと呟いて、はっとなる。
今までこの世界のどの料理も、美味しそう、だなんて感じたことは無かったのに。
だからいつも作る料理は一人前。自分は音音の買ってきた薔薇を食べていた。
真冬は立ち上がった。

「これ・・今日これにしてみよう・・」

もしかしたら、自分も食べれるかも知れないと思った。
音音と同じモノを食べれるかもしれない、と。
そう思うと自然と笑みが零れてくる。真冬は一人で、えへへ、と笑ったのだった。


「・・・・・・・・・・・・・なんでケーキ・・・?」

テーブルの上に並べられた、綺麗に出来て甘い香りを放っている苺のケーキを見て音音は
誰か誕生日だっけ、と呟く。
何だか呆然としている音音を見て真冬は悲しげな顔をする。

「ご、ごめん!キライだった・・?あ、それともあんまり上手じゃなかったかな・・・」

どうしようどうしよう、と困り始めた真冬に音音ははっとなって

「あ、いやそうじゃなくて・・・ケーキってさ、普通デザートじゃないかな・・?」

ていうかこの苺はどこから・・?、と柔らかく指摘する音音に、え、と真冬は声を零す。
デザート、食後のデザート。つまりそれは主食じゃないという事で。
だからそれはご飯とは合わないという事で。

「ご・・・ごめんなさい・・美味しそうで・・つい」

真冬は申し訳なさいっぱいに謝った。
ああ、どうしてこうなんだろう。迷惑ばっかりかけてる。
真冬は何だか泣きたい気持ちになった。だけど音音は、真冬の頭を撫でてくる。
そして小さく笑って。

「ま、いっか。俺ケーキ好きだし」


そう言ってまた僕を助けてくれるのでした。


ケーキの上の、苺とやらは美味しくて初めてこの人間界のものを食べれて
なんだか嬉しくてつい泣いてしまった。
そしたら音音はまた僕の頭を撫でて、春になったらいっぱい持ってきてやるって言ってくれた。

その時こう、思ったんだ。

ああ
やっぱりここは 暖かいな


.....fin
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No.5 吸血鬼は苺を食べる。 / 小説 / Comment*0 // PageTop▲

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魔月 霰

Author:魔月 霰
ヲタクで腐女子、萌えない黒髪眼鏡。
真面目そうな顔してて頭の中は超腐ってます。
一応十代だが年より老けてると言われる。

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