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アトラクションデイズ

  なんでとか、そんなの関係無い。ただ君が、笑うだけだから。
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2009.03.02  <<20:08



人間は嫌い。だから、誰とも付き合わない。
人とか思想とかって分からない。
自分で傷付けておきながら、相手が離れると悲壮に浸ったりして
相手の所為だなんて散々喚いておきながら、謝られると自分が悪かったって泣き出したりして
好きとか愛してるとかもっと分からない。
何をもってそう言うのか、
心臓が高鳴るから?顔が熱くなるから?
分からない。
だから俺は、誰とも付き合わないし、誰も好きにならない。
例えば誰かに告白されても、それで何となく付き合って
やっぱ違う、って言われて告白されたのにふられて。
それを何度か繰り返して、何時の間にか年老いて、いつの間にか死んでいる。
そんな人生を送るんだと思う。
生き甲斐も何も見つけずに、そのまま死んでいくんだと思う。
・・だけどそいつは、突然俺の前に現れて。

「俺、和緒が好き」

俺のそんな人生計画やら思考やらを滅茶苦茶にしやがった。


その微熱に浮かされて


存在意義とか生き甲斐とか、恋人とか夢とか、誰もが求めているものを、望んだ事は一度もない。
何を思って生きているのか、自分でも不思議なくらい何も無くて
ただ淡々と過ぎていく毎日をただただぼーっと見つめるだけで、本当に何も無かった。
もちろんそれを誰かに話すなんて事は無いし、別にそれに悩んでいる訳じゃない。
何の意味もなく生きているから、ってそんだけの理由で死ぬほど俺は弱い人間でもないし
じゃあ何かを見つけよう、って歩き出す強い人間でもない。
何も分からんよ、というより何も分かりたくない。
何で生きてるの、何で何も望めないの、そんなの分かりたくもない。
ただ何となく、多分それが一番近い言葉。

だけどあいつは、一架は違った。
存在意義とか生き甲斐とか、恋人とか夢とか、別に対して望んでは居ないようだけど
でもちゃんと欲しいモノが見えていて、それに全速力で突っ走っていく
それがガラスケースの向こう側でも、それが出てくるまでガラスを叩き続ける。
そんな良く言えば、真っ直ぐで純粋。悪く言えば、自己中で向こう見ず。
俺が一番嫌いなタイプの人間だった。
だけど一架にとっては、俺はガラスケースの向こうの欲しいもので。
一架はずっと、俺の前にあるガラスを叩き続けている。
俺はその今にも一架に崩されてしまいそうなそのガラスを不安気に見つめる事しかできなくて
それに溜まらない嫌悪を感じる。
真っ直ぐ向けられた黒くて大きな瞳も、真っ直ぐと突き刺さってくるその言葉も
最初は絶対受け入れられなかったのに今はもう、油断したら受け入れてしまいそうで怖い。


「・・・で、なんでいるんだよ」

何時の間にか気付いたら、一架は俺の部屋に出入りするようになっていた。
どこから入っているのか知らないが、明らかに不法侵入な事には変わりない。
警察に突き出す事もしない俺もおかしいのだけれど。

「何でって、和緒に会いたいから」

何でそんな事も分かんないの?あたりまえだよ?、ヘタしたら女に間違えられそうなその綺麗な顔を
そんな色に染めて一架は答えた。
ストレートに、相変わらずストレートにそう答える。

「だからって勝手にはいんなよ・・・」

何ていつもいってるから、もう慣れてしまったけど。
最初の頃は本当に警察に突き出そうと思っていた。
でも何であの時突き出す事が出来なかったのか、俺は未だに分からない。

「・・和緒」

ああ嫌だ。嫌気が差す。
こいつが、和緒和緒、って俺の事を呼ぶ度に俺は応えてしまいそうになる。
だから必死で俺は口を押さえる。
この口が開いたら、俺は絶対なりたくない人間になってしまうって言い聞かせて。

「・・・何でそんな、怒った顔してるの?」

苛々する。
一架に、というより自分に苛立ってる。

「・・・・・・怒ってるから」

何で、こんななんだよ。
俺の中にずけずけ入って来て、俺は必死で壁を作って。
それでもこいつを傷付けられないし、拒めなくなってきてる。
こんな自己中で我が儘で、俺の一番嫌いなタイプ。
なのに、なのに何で。

「・・何で俺の顔、見てくれないの?」

ああ、もうだめだ、そう一瞬思った。
そしたら身体が勝手に動いて、俺はいつの間にやら隣に座っていた一架を
そのままベッドに押し倒していた。

「お前が嫌いだからだよ」

声が震えてる。
嫌ってしまえ、最低って怒鳴りつけてしまえ。
何で俺なんだよ、何でお前なんだよ。
何で、何でこんな・・・。

「・・・和緒?」

身じろぎもせずに、ただ、心配そうに俺の顔を見上げてくる。
真っ直ぐに、俺の顔を見つめてくる。
胸が痛い。何か細い紐で縛られてる見たいにキリキリ痛む。

「和緒・・何で、泣いてるの?」

一架の言葉でようやく気付いた。泣いてる、そうか俺は泣いているのか。
泣くのなんて何年ぶりだろう。最後に泣いたのいつだっけか。
何で、なんて俺が聞きたい。

「なか・・ないで?」

一架はその心配そうな瞳を俺に真っ直ぐと向けて、俺の頬に手をあてた。
そしてゆっくりと顔を近付けて、俺の唇を突然奪った。
それでも俺は動くことが出来なかった。
本当なら押し退けて、殴り飛ばして、部屋を飛び出すのに。
何も出来なかった。何も出来ずに、ただひたすら泣いた。


気付いたら朝になっていた。
目が覚めて一番に思ったのは、今日が日曜で良かった、ってどうでもいい事。
隣の一架はぎゅっと俺の手を握っていて、規則正しい寝息を立てていた。

「・・・睫毛長・・」

またどうでも良い事を呟いて、握られた手を少しだけ握りかえした。
そして小さく溜息を付いた。

こいつに、ガラスが壊されてしまった。
俺が出てくるのを待たずにこいつは、ガラスを叩き割って俺の中に飛び込んできた。
好きとか愛してるとか、感情とか思想とか、まだ分からない。
一架が何を持って俺を追いかけ回すのかとか
俺が何を持って一架を受け入れてしまったのかとか
全然分からんし、でもやっぱり分かりたくもない。
でも、

「和緒・・・すきぃ」

えへへへ、と眼を閉じたまま不気味な笑いを浮かべる一架が
溜まらなく綺麗な生き物に見える俺は
多分その熱に浮かされているんだろうと思うだけだった。


......end
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No.7 その微熱に浮かされて / 小説 / Comment*0 // PageTop▲

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魔月 霰

Author:魔月 霰
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真面目そうな顔してて頭の中は超腐ってます。
一応十代だが年より老けてると言われる。

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